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嵐の夜に痕をつけられて
第5章 亮太の執着
エレベーターが一階に着き、扉が開くと周りの人の流れに合わせて降りて帰路につく。

会社を出て少し歩いた時だった。
いきなり後ろから右腕を引っ張られ、横道に引きずり込まれた。
驚いて振り返ると、私を掴む手の先には亮太がいた。


「なっ……!」


なんで亮太がいるの? 何の用?
声にならない声を上げると、私が聞く前に亮太が口を開いた。


「お前、男出来るの早すぎじゃね? 
 それとも浮気してたの? 
 そういう女とは思ってなかったのに、
 案外やる事やってんのな」


何のこと? と聞き返そうとしたとき、亮太が私の胸元を指差した。
シャツのVネック部分からほんの少しだけ、相沢さんがつけた痕が見えていた。


「そういうの嫌がってたくせに」


しまった。見られた。


「相手誰? まさか会社の奴じゃないよな?」

「ちがっ……」

「まぁ誰でもいいよ。
 ちょうどいいや、今からお前んちに荷物取り行くから、ついでにどんな奴か教えてよ」

「待っ」

「俺と付き合ってんのに浮気するなんて恵も実は緩いんだなー。そいつとどんなセックスすんの? 
 俺にも教えてよ」


亮太はニヤニヤ笑って私の話を全く聞こうとしない。
そのまま私の肩を掴んで、並んで駅の方へと歩き出した。

やめて、触らないで、気持ち悪い。
亮太が触れた部分に鳥肌が立つ。

思わず辺りを見回しても当然知っている人などいるはずもなく、声は恐怖で全く出ない。
嫌だ、このままこの人を家に入れたくない。


怖い。誰か助けて。


その時、亮太の携帯が鳴った。
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