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嵐の夜に痕をつけられて
第5章 亮太の執着
嬉しかった。
一人で帰っていたらきっと、亮太の感触を思い出して寝るまで気分が悪いままだっただろう。

でも今は、相沢さんと一緒に帰っていることに胸がドキドキしている。相沢さんが隣にいることが嬉しい。
さっきまでの恐怖はどこかへ行ってしまった。

一人暮らしをしてるアパートに着くと、相沢さんが口を開いた。


「田上の荷物ってどれくらいあるの?」

「そんなにありません。
 着替えが少しと、洗面具くらいです」

「持ってきて」

「え?」

「いいから持ってきて。
 紙袋か段ボールでも何でもいいからまとめて。
 あと、あいつの住所が分かるなら教えて」


言われた通り急いで紙袋に荷物をまとめて、住所を書いたメモを添えて玄関の外で待つ相沢さんに渡す。


「これで間違いなく全部?」

「はい」


中身を確認すると相沢さんは、真面目な顔をして言った。


「今日の田上とのこと、忘れられそう?」


一瞬何のことを言っているのだろうと思ったけれど、相沢さんが人差し指を唇に当てる仕草ですぐに意味が分かった。
思わず恥ずかしくて下を向いてしまう。

どうしよう。

何かを期待している自分がいる。
そしてそんな自分を隠せない。
相沢さんにも絶対バレている。
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