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嵐の夜に痕をつけられて
第6章 相沢の謝罪
亮太の荷物は、相沢さんが亮太の家に郵送したらしい。
誰が送ってきたのかは筆跡で分かると思う、と相沢さんからメールがきた。

メールが来る前からなんとなくそうなんじゃないかな、という気はしていた。
あれから一度も亮太から接触がないからだ。

亮太も馬鹿じゃない。
送り主が誰なのか、私ではない人間が自分の荷物を郵送してきた意味を分かっている。



相沢さんと亮太は同じ部署の先輩と後輩だ。
亮太が今の部署に異動してすぐに受けたプロジェクトに、私も補佐として一時的に参加した。

相沢さんも当時同じプロジェクトにいたけれどチームが違うので関わることはほとんどなかった。

私は新人時代に扱かれた記憶が強すぎて、積極的に話しかける気にもなれなかった。

周りの女性社員はみんなこぞって相沢さんを囃し立てるけど、顔がいいだけで実際は仕事に厳しくて愛想もない。

みんな一緒に仕事をしたことがないからそんなことが言えるんだと思っていた。

一方、社交的で自分の意見をはっきり言える亮太への気持ちは、憧れからすぐに好意に変わった。

だからこそ、何かと勢いで仕事をさばいていく亮太を必死でフォローした。
プロジェクトが終わった頃、亮太から告白されたときは本当に嬉しかった。

職場で付き合っていることは公言しなかった。

でも身近な人は知っていたと思う。何度か二人で一緒に帰ったこともあったし、聞かれれば答えた。

でもそれも付き合って半年間くらいの話だ。
あとの一年半は職場で亮太と話す機会が自然と減ったので、大半の人からは別れたと思われていた。

だからサキちゃんは亮太と関係を持つことにあまり抵抗がなかったんだろう。
本当に付き合ってるのかどうかも怪しい上に、先輩とはいえ明らかに不釣り合いな女だ。

バレたところで、と思われても不思議じゃない。



どうして相沢さんは私にあんなことをしたんだろう。
私はあの大雨の日からずっと相沢さんのことばかり考えている。

自分の気持ちが全く追いつかないし、全く分からない。私は相沢さんとどうなりたいんだろう。


……あんな人に本気で相手にされるはずないのに。


もう二週間以上、そんなことを一人で悶々と考えていた。
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