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嵐の夜に痕をつけられて
第6章 相沢の謝罪
今日は早く帰れると思ったのに。


明日締め切りのデータ入力の束をまさか夕方渡されるとは思わなかった。
提出期限はとっくに過ぎているものを「急ぎで」の一言で放り投げてきたのは亮太の上司だ。

当然私の上司は猛抗議したけれど、抗議したところで入力は誰かがしなければいけない。
サキちゃんは用事があるとか何とか言って上手く逃げた。

私はどうしてもこういう時断ることができない。
上司も立川なら断らないと思っているんだろう。

良いように使われていると分かっていてもこういう小さな恩を売っておけば、今後自分が困ったときに助けてもらえるものだ。
最優先で頼むと言われ、私は引き受けた。

とりあえず今日は出来るところまで入力しよう。

長時間の残業は会社としては困るので基本的に残業は認められない。
でも繁忙期や今日みたいな場合はどうしても残業しなければならない。
上司公認の残業なのだから気楽にこの一人の時間を楽しもう。
難しい仕事ではないのだし。



誰もいないオフィスは集中しやすくて嫌いじゃない。キーボードをパチパチと叩く音が部屋に響いている。

思ったよりも早く帰れそうだと顔を上げたとき、扉の空いた廊下から誰かの視線を感じた。
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