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嵐の夜に痕をつけられて
第6章 相沢の謝罪
相沢さんは小さく笑う。


「相変わらず立川は真面目だな。普通は俺の指導を受けた奴はみんな俺を煙たがるんだよ。田上みたいにな」

「そんな! だって相沢さんはいつも言い方は厳しいですけど間違ったことは言わないじゃないですか!」

「やっぱり言い方は厳しいんだな」

「あ……えと、はい……」


ハハッと声を出して笑う相沢さん。
この人こんな顔して笑うこともあるんだ。

相沢さんの笑顔は思っていたより柔らかい。
そんな顔を向けてくれたことに嬉しくなってしまう。


「立川……こないだは悪かったな」


急に相沢さんの顔が歪んだ。
こないだ、がどのことを言っているのか逡巡してると、相沢さんは続ける。


「雨の……停電した日。悪かった。
 泣いてる立川を抱き締めてたらちょっと自制が効かなくなった。
 あんなことするつもりはなかったんだ」


急にあの日のことを持ち出されて、恥ずかしさが蘇って私は下を向いてしまう。
と同時に、やっぱり気まぐれだったのだと思うと胸の奥にチクリと何かが刺さる。


「ずっと目をつけていた子があっさり後輩に取られて、二年も見てるだけだったその子が振られたって泣いてるんだ。
 さすがに何もせずにはいられなかった」

「え?」

「あの時間だけでも俺のものになればいいって思ってしまった。
 立川は俺のことをそんな風に見ないって分かってたから」


どうしよう。
それってやっぱり、そういうことだよね。
顔を上げて相沢さんを見ると、諦めたように笑っていた。


「すまなかった。忘れてほしい。その後のことも」
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