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私でよろしいのですか
第1章 私でよろしいのですか
クラウスは息を呑んだ。
ハンナは目を伏せて沈黙する。


父のようにだと? 
誇れるものは爵位と財産以外何も持たず、正妻に言われるがまま母親ごとお前を捨てた父のように? 

最低限の衣食住以外はメイドとしての給金すら与えず、飼い殺しのように屋敷に閉じ込めた父のように?

俺が手放すだと?

お前は何もわかっていない……!


気がついたときにはハンナの唇をこじ開け、強引に舌を絡ませていた。
背中を抱き寄せて後頭部を支え、腕の中に閉じ込める。

ハンナは必死にクラウスの舌を追いかけると、すぐに息が乱れ始めた。
再び火がついた身体はどちらも性急にお互いを求めており、繋がったままの秘部は更に潤いを増す。

咥内を貪り、唇を吸いながらクラウスはハンナを激しく揺さぶった。


「くっ……」

「だ、んな、さ……あっ、んんっ!」

「お前、は、俺の、ものだ」

「あ、あっ、んっ」

「どこへも、やる、つもりは、ない」

「あぁっ! んっ! やっ!」


 ――ハンナ――


聞こえるか聞こえないか、押し殺すように名前を呼ぶとハンナの奥に力が入った。


「……っ……くっ……」

「あぁ、んん! やっ、あぁぁぁ!」


ギュッと絞るように剛直を締められ、突き上げが一掃激しくなったところで動きが止まった。
同時に奥に放たれた熱がじわりとハンナの中に広がる。

ゆるゆると腰を揺らして残った余韻を放ちながら、クラウスは同じように達したばかりで朦朧とするハンナの身体を支えた。

顔を上に向けさせて唇に吸いつく。
激しさはないが、何度も角度を変えて抜き差しされる舌にハンナの声が漏れる。


「んっ……」


ハンナが目を開けると何かを案じているようなクラウスの視線と目が合った。
自分の主人は何を求めているのだろうかと痺れが残る頭で考えても、優しく慰めるような愛撫に思考が流されてしまう。

そんなハンナを薄目で眺めながらクラウスは頭の片隅に浮かんだ未来を考えていた。


 ――いっそ大陸に連れて行くか――


ついてくるか? と聞いたら、ハンナは何と答えるだろうか。


 ――私でよろしいのですか――


クラウスは小さく決意し、そのままハンナを抱いて寝室に移ると、夜半すぎまで繰り返し笑わないメイドを攻め立てた。







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