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心より先に体を繋ぐ
第1章 酒に酔わせて
「それでさぁ、三城ちゃんが困ってたから助けてあげたの。そしたら、今度お礼にお茶でも行きませんか? だって」
 この男はもう三度目くらいになる話しを嬉々として私にしゃべってくる。
「はいはい、もうそれは聞き飽きました。嬉しいからって飲み過ぎ。とにかく水飲んで」
 チューハイを三杯。お酒が弱いくせによくもまあこんなに飲んだものだ。私は呆れながら目の前に座る顔を真っ赤にした男、健斗に水を差し出した。
 私たちは週に一度、時間が合えばこうやって飲みに出ていた。
 元は大学の仲良しグループに属する奴くらいの認識だったのに、気がつけばさしで飲む間柄になっていた。なんでそうなったのかはもう忘れてしまった。
 さっき健斗が話していた三城というのは健斗の会社の同僚のことで、今片思い中の相手らしい。
 健斗はその三城という女に勝手に恋に落ち、私に今後どうするべきかとうるさいくらいに相談してくる。
 互いの仕事の関係でこうやって向かい合うのは週一度あればいい方だが、メッセージのやり取りは毎日のようにしている。そこでも健斗はずっと三城ちゃんがどうしたといっていくるのには辟易しているわけなのだが。
 正直その三城ちゃんが羨ましい。健斗にこんなに愛されているなんて。
 最初はそんなこと思ってなかったのに、健斗の恋愛観とか今までの恋愛話を聞くうちに、惹かれていく自分がいた。
 一緒にいて楽しかったし(三城ちゃんの話しを聞く時を除いて)、案外趣味の話しも弾んで、恋人としてそばに居られたらとても楽だろうなと思った。自然体でいれる気がした。
 私が健斗の彼女になりたい。その思いは日に日に大きくなっていったが、健斗が片思い中とは別に、私自身にも一つ問題があった。
 私には彼氏がいた。
 世の中の全ての女がそうであるとは決して思わないが、恋愛というか付き合うという関係において女は卑怯だ。
 私自身もそうだし、友人にもいるのだが、彼氏と別れる前に次の相手を見つけている。
 今の彼氏と別れるために、新しい男を探し出す。まともな人であれば、きちんと別れてから次の人を探した方がいいんじゃないかという。しかし、男を常にキープしておかなければ耐えられないという人種もいるのである。
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