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心より先に体を繋ぐ
第1章 酒に酔わせて
 失敗しちゃったのかな。今思うととんでもない勝負にでてしまったと、自分の行動を後悔した。
 あの楽しい飲み会もなくなっちゃうのか……。
 物凄くさみしかったが、布団に潜り込み寝てやり過ごすことにした。
 それなのに、布団の中で微かに残る健斗の匂いが胸を締め付け、寝かせてはくれない。
「いつまで布団の中にいるの?」
 健斗を思いながら、ぐずぐずと涙を流していると上から声が降ってきた。
 布団から顔を出すとそこには健斗が立っている。
「なんで、まだいるの?」
 涙声でたずねると、健斗が呆れた顔で見下ろしてきた。
「いちゃダメなわけ?」
 私は慌てて首を横に振った。
 その行動に少し頬を緩めると、屈んで私と視線を合わせた。
「お前さぁ、やり方ずるくない? あんなことされたら揺らぐじゃん」
 私はただ健斗を見つめる。
「行かないで、三城ちゃんのとこ」
 そういえば、乱暴に頭を撫でられた。
「一回家に帰って、三城ちゃんには会いに行くよ。ドタキャンとかできないし。それ終わったらまた来るから、これからどうするか話そう?」
 おでこにキスをすると、健斗は荷物を持って玄関に歩き出した。ドアに手をかける前に、それまでに服くらい着とけよといい残して、外に行ってしまった。
 健斗がまた来てくれる。失敗ではなかったかもしれない。
 これから健斗は私だけを見てくれるかも。私の中がどんどん健斗で埋め尽くされていく。
 スマホを手に取ると彼氏に電話をかけた。
 別れましょう。いつもならそういわれるのを待っているのに、今回は自分から口にした。彼は一つ息を吐いて、いいよといった。さよならといいあい、電話は切られた。あっさりと私たちの関係に幕が下りた。
 まだ、健斗と付き合えると決まったわけではないが、他の男と付き合っているなんて考えられない程、今は健斗で一杯だった。
 私は今久しぶりに計算なしで恋をしようとしているのかもしれない。
 そんなことを思いながら、裸のまま浴室に移動した。
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