この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
園
第1章 レディスキッチン 園

ドアの前に立つと、ドアはすっと左へとスライドした。自動ドアだった。ぱっと見はレトロそうなのにと、微妙なギャップに思わず彩乃は吹き出した。
明るい照明の店内はそれほど広くはなかった。四人がけ用のテーブル席が四っつだけのこじんまりした店だった。一番奥のテーブル席の一つに四十代くらいのいかにも有閑マダムと言った感じの、お洒落な装いのおばさまたちが三人で座っていた。
奥の厨房から良い匂いが流れてくる。彩乃の胃袋が催促するように鳴った。テーブル席の一人のおばさまが彩乃を見る。……聞こえたのかしら? 彩乃はどきっとした。
「いらっしゃいませ!」
明るく元気な声が彩乃を迎えた。紺色のミニのワンピ-スに白いエプロンをしている。この店のウエイトレスなのだろう。見た感じでは彩乃より年下で可愛い娘だ。高校生かもしれない。……でも、今日は平日よね? 学校、どうしたんだろう? 彩乃は笑顔の娘を見て思う。左胸に「エイコ」と印字されたネームプレートを付けていた。
「どうぞ、こちらへ!」
エイコはおばさまたちの隣のテーブルへ案内された。彩乃はおばさまたちに背を向けるようにして座る。しばらくしてエイコは水の入ったグラスとメニューを持って来た。
「お決まりになりましたら、お呼び下さい」
「はい、ありがとう」
彩乃は礼を言ってメニューを開く。品数は少なかった。どれにしようかと迷っていると、声をかけられた。
「あなた、ここは初めて?」
彩乃が顔を上げると、お腹が鳴った時に彩乃を見ていたおばさまがテーブル横の通路に立っていた。
「……ええ、まあ……」
彩乃は適当に返事をする。
「じゃあ……」
おばさまは言うと、彩乃の隣に座って来た。ちょっと恰幅の良いおばさまで、座った拍子にびたっと彩乃に引っ付いた。彩乃は席を少しずれて隙間を作った。
「これ、これが良いわ」おばさまは彩乃に頓着することなく、メニューの一か所を太めの指で指示した。「『園ランチレディス』! これが良いわよ。少しずつが一杯並んでいるわ。女子には嬉しいランチだわ! これに決めなさいな」
「は、はい……」圧倒された彩乃は何も言えない。「そうします……」
「まあ、素直な娘ねぇ」おばさまは言うと、また引っ付いてきた。彩乃に逃げ場はなかった。「ちょっと! エイコちゃん!」
おばさまはエイコを呼ぶ。
明るい照明の店内はそれほど広くはなかった。四人がけ用のテーブル席が四っつだけのこじんまりした店だった。一番奥のテーブル席の一つに四十代くらいのいかにも有閑マダムと言った感じの、お洒落な装いのおばさまたちが三人で座っていた。
奥の厨房から良い匂いが流れてくる。彩乃の胃袋が催促するように鳴った。テーブル席の一人のおばさまが彩乃を見る。……聞こえたのかしら? 彩乃はどきっとした。
「いらっしゃいませ!」
明るく元気な声が彩乃を迎えた。紺色のミニのワンピ-スに白いエプロンをしている。この店のウエイトレスなのだろう。見た感じでは彩乃より年下で可愛い娘だ。高校生かもしれない。……でも、今日は平日よね? 学校、どうしたんだろう? 彩乃は笑顔の娘を見て思う。左胸に「エイコ」と印字されたネームプレートを付けていた。
「どうぞ、こちらへ!」
エイコはおばさまたちの隣のテーブルへ案内された。彩乃はおばさまたちに背を向けるようにして座る。しばらくしてエイコは水の入ったグラスとメニューを持って来た。
「お決まりになりましたら、お呼び下さい」
「はい、ありがとう」
彩乃は礼を言ってメニューを開く。品数は少なかった。どれにしようかと迷っていると、声をかけられた。
「あなた、ここは初めて?」
彩乃が顔を上げると、お腹が鳴った時に彩乃を見ていたおばさまがテーブル横の通路に立っていた。
「……ええ、まあ……」
彩乃は適当に返事をする。
「じゃあ……」
おばさまは言うと、彩乃の隣に座って来た。ちょっと恰幅の良いおばさまで、座った拍子にびたっと彩乃に引っ付いた。彩乃は席を少しずれて隙間を作った。
「これ、これが良いわ」おばさまは彩乃に頓着することなく、メニューの一か所を太めの指で指示した。「『園ランチレディス』! これが良いわよ。少しずつが一杯並んでいるわ。女子には嬉しいランチだわ! これに決めなさいな」
「は、はい……」圧倒された彩乃は何も言えない。「そうします……」
「まあ、素直な娘ねぇ」おばさまは言うと、また引っ付いてきた。彩乃に逃げ場はなかった。「ちょっと! エイコちゃん!」
おばさまはエイコを呼ぶ。

