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第1章 レディスキッチン　園

　エイコはにこにこしながら急ぎ足でやって来た。

「はい、何でしょうか？　田所さん？」

　やはり、この田所と呼ばれたおばさまはこの店の常連さんのようだ。

「こちらのお嬢さん、『園ランチレディス』をご注文よ！」田所のおばさまは得意気に言う。「わたしがおすすめしたんだけどね」

「……それで良いですか？」エイコは彩乃を見る。「田所さんって、誰にでもこれをすすめるんです」

「何よ、この店で一番美味しいじゃない！」

　田所のおばさまは言いながら、彩乃の肩に手を回した。彩乃は突然の事にからだをびくっとさせた。

「こらこら、田所ちゃん！」席に残っていたおばさまのうちの一人、痩せて品がある感じの方が声を掛けて来た。「初対面の人に馴れ馴れしいわよ」

「良いじゃないのよ、千葉ちゃん！」田所のおばさまが千葉のおばさまに文句を言う。「わたしは誰にでも親切なのよ」

「ありがた迷惑よ。こっちに戻ってらっしゃいな」

「分かったわ……」田所のおばさまは大きなため息をつき、彩乃を見る。「でもね、ランチは美味しいわよ」