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第3章 美和子と彩乃
 食事では、昔話に興じた。

 食卓を挟んで向かい合って座っている。

「わたし、中学の頃から彩乃が好きだったのよね…… でもさ、彩乃は全然気がつかなくってさ」

「だって、わたし、その頃って、そんなの知らなかったし……」

「知ってたら、どうしてた?」

「う~ん…… ほら、生徒会長だった青柳美優理っていたじゃない?」

「ああ、あのインテリ娘! わたしは苦手だったなぁ。何でも完璧って感じでさ、一緒に居
たら息苦しい気がする」

「でも、あの娘だったら、良かったかな」

「ええっ! あんなインテリで理屈っぽい奴がぁ?」

「ええ。何をやっても駄目出しされてさ。それが何時しか快感になって…… な~んてね! 冗談よぉ!」

「へぇぇ…… 冗談なの?」

 美和子の目が妖しく光る。

「彩乃ってさ、ひょっとして苛められたい願望ってあるんじゃない?」

「無いわよ! 無い無い!」

 彩乃は思い切り否定する。

「美和子に焼きもち妬いてほしかったから、言ってみただけ」

「ふ~ん……」

 美和子は立ち上がる。

「わたしに焼きもち妬かせようだなんて…… 悪い子ね」

 美和子は言うと、座っている彩乃の横まで来る。

 上半身を屈め、彩乃の顔を覗きこむ。

 顔が近づいて来る。

 彩乃は目を閉じ、美和子の唇が自分のそれに重なるのを感じる。

 力を入れない柔らかな感触。

 唇から甘い疼きが全身に広がる。

 美和子はくちづけをしたままで彩乃の肩に手を掛ける。

 彩乃も美和子の腕に手を掛ける。

「彩乃……」

 美和子は唇を離し、彩乃に囁く。

「……立って」

 彩乃は美和子を見つめたまま立ち上がる。

「手を後ろにして……」

 美和子が言う。

 彩乃は両手を背後に回す。

 何も纏わない彩乃のからだを美和子は見つめる。

 その視線に彩乃の頬が熱くなる。

「目を閉じて……」

 美和子は笑みながら言う。

 彩乃は言われるままにする。

 美和子は上半身を起こす。
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