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第1章 レディスキッチン 園
 彩乃は家に帰ってきた。

「あら、お帰り。ちょっと遅かったわね?」母親が言う。「就職祝いって言う事で、お父さんの帰りに待ち合わせてレストランに行く事になっているのよ」

「うん、分かった」彩乃は笑みを浮かべる。「ちょっと寝るわ。なんだか疲れちゃって… …」

「そう? 緊張したのねぇ。……そうそう、お昼はちゃんと食べた? まだなら何か作るけど?」

「いいわ。食べて来たから……」

「そうなんだ。高校生の頃は何かあると面倒臭がって食べなかったのにねぇ。少しは大人になったのね」

「そうかもね。……じゃあ、少し寝るから、出掛ける頃に起こしてね」

 彩乃は言うと二階の部屋に向かった。元は彩乃の部屋だったが、下宿してからはほぼ物置状態だった。それでも、なんとか布団を敷くスペースはあった。

 彩乃は押入れから敷き布団を出して延べると、面接に着て行ったスーツを脱いで下着姿になる。そして、布団の上に転がった。大の字になって天井を見つめ、ため息をつく。 

 ……あの店の光景が思い浮かぶ。

 田所のおばさまの恍惚とした表情、その乳房に吸い付く千葉と佐藤のおばさまたち。皆上半身が裸だった。そして、エイコが乳首を突いて来た。

 ……いったい、あの店は何よう! どうしてあんな店があるのよう! 彩乃はぷっと頬を膨らませる。

 通っている短大にも、そっち系の娘が居ると聞いた事がある。彩乃は居る事に文句を言うつもりは無かった。ただ、自分がそう言う事に関わるとは思っても見なかった。全くの別世界の話だと思っていた。しかし、そんな世界を望まないのに見てしまったのだ。

 ……何よ、あのおばさまの逝っちゃったような顔! 何よ、あのウエイトレスの娘、人の胸を! そう思った途端、彩乃の左乳首がきゅんと疼いた。
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