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新解釈 紺屋の女房
第1章 染物屋「紺屋」の女将

「おまえさん…
あたいはもうダメかもしんない…」

布団に臥せった女房のお玉が弱々しい声を漏らす。

「何を弱気なことを…
お前のためならどんな高貴な医者でも
連れてきてやるから今しばらく辛抱しな」

亭主の吉兵衛はそう言ってお玉の手を握った。


今朝まで元気に
店の帳場を切り盛りしていた女房のお玉が
昼時になって急に差し込みが来たと言って
床に伏せた。
町医者に診てもらったが
さっぱり原因はわからないという。


「おまえさん、ひとつ頼みがあるのだけれども…」

弱々しい声でお玉が
吉兵衛に頼みごとを言い出した。

「なんだい?何なりと言っておくれ」

吉兵衛は心底お玉に惚れていたので
どんな願い事もきいてやろうと思った。

「昼前に女中のお加代に聞いたんだけど、
名医の草庵先生がこの町に遊びに来てるそうな…
ぜひ、草庵先生に診てもらいたいんだよ」

草庵という男の事なら
吉兵衛も小耳に挟んでいた。
腕は確かかどうかは知らぬが、
なにせ歌舞伎役者になってもよいような色男だとか…
あまり気乗りはしなかったが、
他ならぬお玉の願い事なのだから
聞かぬわけにもいかない。

女中のお加代を呼び出し
「これ、お加代、
おまえは草庵先生の居所を知っているのかい?」と訪ねると、知っているというので
「では、ひとっ走りしてお連れしなさい」と命じた。


やって来た草庵という男。

誠に医者と言うよりは
歌舞伎役者というほどの美男子であった。

「では、診察をしてみましょう
気が散るので人払いをお願いします。
それと少々、荒療治になるので
お声が漏れるやもしれませんが
どうぞ、お気になさらずに」

名医と誉れの高い草庵がそういうのならば
従うしかあるまい。
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