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新解釈 紺屋の女房
第4章 おかみさんの情け

久蔵は吉兵衛に連れられて遊郭に遊びに行ってから
すっかりおかしくなってしまった。
確かだったソロバンの腕も落ち、
帳簿の間違いなどザラであった。
「お前さん、久蔵の様子が変だよ
一度お医者さまに診てもらった方が良くないかい?」
お玉は吉兵衛に久蔵を医者に診てもらうことを進言した。
助平で性欲満々だった久蔵が
陰で乳を触らせてやると言おうが
尻を撫でてもいいと言おうが
まったく興味を示さなくなったのだ。
さすがにこれはおかしいとお玉も心底に心配になった。
医者に診てもらっても
「はて?特に悪いところは見受けられませんが」
どこにも異常はないと言う。
医者が帰った後、
番頭の佐平が吉兵衛に耳打ちしてきた。
「旦那様、こりゃひょっとしたらアレじゃありませんか?」
「アレとは?」
吉兵衛が佐平に訝しげに尋ねると
「お医者様でも草津の湯でもと言うではないですか」
笑いを堪えるようにしながら音痴な節をつけて歌いながらそう言った。
「えっ?恋の病と言うのかえ?」
まさかと思いながらも吉兵衛にも心当たりがあった。
確かに久蔵を吉原に連れて行ってから様子がおかしくなった。

