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新解釈 紺屋の女房
第1章 染物屋「紺屋」の女将

翌日、草庵先生を呼びに行った女中のお加代が
血相を変えて帰ってきた。

「おらんのです!
草庵先生が昨夜のうちに荷物をまとめて
また旅に出られたんです!」

そりゃあ、仕方ないねえと
店の旦那の吉兵衛はあきらめ顔だったが
腹の虫が収まらないのは妻のお玉であった。

「もう少しだったのよ、
もう少しで腹の差し込みが全快する筈だったのに…」

お玉は立腹していたけど、
朝餉(あさげ=朝食)をペロリと平らげていたことから回りの皆は、もう医者に治療を施してもらわなくても大丈夫ではないかと思っていた。

「あー!むしゃくしゃする!朝風呂に入るよ!
久蔵、風呂を沸かしておくれ!!」

商いをするものにとって、
朝寝、朝酒、朝湯は
身上(しんしょう=財産)を潰すと言われて
忌み嫌っていた。

「朝湯はやめなさい」と
亭主の吉兵衛がたしなめても言うことをきかない。

お玉に惚れぬいている吉兵衛は
女房に睨まれるとそれ以上は何も言えなかった。
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