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あなたへ……千鶴子より
第4章 絶頂
ああ、何度でも言います。
死のうとした彼は、私の身体を使ってまた生きようと思い始めたのです。
それに応えてあげたい。
私のこの身体でいいなら、いくらでも使って欲しい。
見てください。
彼の無邪気で満足げな寝顔を。
昨日の夜は“男”だった彼も、今は子供そのものです。
私も満たされた気持ちです。
きっと彼の役に立てたからでしょうね。

ごめんなさい。
今日はまだあなたに、お線香とあなたの好きなコーヒーを、あげていませんでした。
いま、淹れて行きますね。
これも何かの運命なのですね。
昨日はあなたの命日でした。
彼は、あなたが授けてくれたのでしょうか?
あなたが亡くなってから、生き甲斐を無くしてしまった私に。
彼に、生きる喜びを教えろ、と言うのですね?
こんな私でも、彼に教えてあげられることがあるのですね?
ああ、もっと教えてあげたい。
教えることで、私も満たされるのです。
今、私は、身体の底から満たされています。

そう、だから私のことを想うあなたなら、私のしたことも、これからすることも許してくれると信じています。
私は今も、こんなにも、あなただけを想っているのですから……。

その証拠に、写真のあなたは、今も私を真っ直ぐ見ています。
どうかこれからも、そこから、私のすることを見守っていてください。

今、彼を起こしますね。



完。
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