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JUN(ジュン) ~メールの恋人~
第1章 出会い

木枯らしがオフィス街の歩道を駆け抜けていく…

その風の冷たさに、大杉卓也は
オータムコートの襟を立てた。
そういえば今夜から冬型の気圧配置になると
朝の天気予報で言ってたな。

卓也は薄っぺらいオータムコートをチョイスしたことを悔やんでいた。
体の芯まで冷え切っている。
残業の疲れがドッと出てきそうだった。

温かいコーヒーが恋しかった。
かと言って道端の赤い自販機の缶コーヒーなどは
まっぴらごめんだった。
とにかく落ち着ける店内で
温かいコーヒーが飲みたい…

視線を落としてトボトボと歩く卓也は、
ふと視線を上げた。
その視界にコーヒーショップの緑色の看板が飛び込んできた。

店内はほどよい空調で
一歩、足を踏み入れただけで癒された。
まるでオアシスだと感じた。

「ご注文をどうぞ」

夜も更けてきた時間ということで、
店員の疲れもピークに達してるのだろうか
目鼻立ちが整った可愛い女性店員なのに、
その可愛い顔からは笑顔が消え去っていた。

「え~っと…お店の暖かさにホッとしたんで
ホットコーヒーを」
我ながらうまい事言ったなあと
自画自賛してる僕の胸中を無視するように
ニコリともせずに

「サイズはどうされますか?」ときたもんだ。

「あ、え、えっと…トールで…」

ジョークを無視されるって
けっこうきついんだよなあ…

無愛想な店員からトールカップを受け取り
アシュトレイを手に喫煙ルームの片隅に陣取った。
マルボロを箱から1本口に咥え、
火をつけながらブリーフケースから
スマホを取り出し、メールのチェックをしてみた。

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