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見習いドS彼氏
第10章 すれ違い
「ごめん……」

感情の極まりが治まると智輝は照れたように謝り、弥生の胸から顔を離した。

「いえ……お茶でも、淹れますね」

何事もなかったかのように振る舞い、弥生は台所へ消えた。
その気遣いが智輝にはありがたかった。
弥生の淹れてくれたお茶は温かくて、香りが心を安らげてくれた。

「帰ってきませんね……」

智輝は天辺を回った時計を見詰めながら呟いた。

「今日はもう遅いから泊まっていってください」

弥生は少しだけ照れ臭そうに告げた。

「いえ……帰ります……ありがとう。奈緒が戻ったら連絡下さい」

弥生の申し入れを辞退し、部屋をあとにした。
(奈緒、どこにいるんだよ……っ)
夜の空を見上げながら、智輝は息を吐いた。
深夜に吐く息が少しだけ白くなる、そんな季節に差し掛かっていた。
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