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私は管理人
第1章 私は管理人よ

わたし、真野紗耶香は
夫と二人でマンションの管理人をしています。

「じゃあ、いってくるよ」

ネクタイを絞めながら
慌ただしく夫の雅之はドアを開けて出て行った。

「あなた、いってらっしゃい」

わたしは小さく手を振りながら夫を見送った。

管理人の仕事は賃金が安いので、
夫はサラリーマンをしていて、
実質、管理人の仕事は
わたし一人でしているようなものでした。


「あ、管理人さん、おはようございます」

わたしの後ろから 
2Fの大野さんが声をかけました。

大野さんは昨年離婚したバツイチさんです。

「おはようございます」

わたしは廊下のパイプスペースから
箒と塵取りを取り出しながら
目を合わさずに挨拶を返しました。

離婚してからというもの、
大野さんのわたしを見る眼が
いやらしくなってきたのです。

「いやあ、管理人さんは働き者ですね~
この広いマンションの廊下を
毎日清掃してくれてるんですから」

大野さんは明るい声で
なれなれしく会話を続けようとしました。

「仕事ですから…」

廊下のゴミと一緒に大野さん共々掃き出してしまいたい衝動に駆られました。

「俺も早く管理人さんみたいな美人と
再婚しないとなあ…」

会話を求める大野さんの声を
単なる独り言だと思うようにしました。

声は明るいのですが、
きっと目はいやらしくわたしのお尻を
品定めするように見つめてるのだと
視線を感じてました。
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