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私は管理人
第6章 久孝さんと玲子さん
「まあ!やっぱり匂いがそちらの部屋にも流れていましたか?
最近は気候がいいのでベランダを解放しているものだから…
これからはちゃんと閉めてから線香を焚くことにしますわね」
きっと匂いの事で苦情を言いに来たのだろうと
脇坂さんはピンときたようです。
「いえ、そんな気づかいは無用です」
文句を言うと息巻いていた桜本くんの変貌に
わたしは驚いて彼の顔を呆然と見やりました。
その後は上品なお茶菓子と玉露のお茶をいただき、
和気あいあいとした時間が流れました。
「脇坂さんは僕の母に似てるんです
またこうしてお邪魔に来てもいいですか?」
桜本くんは脇坂さんのお部屋を後にする時に
そんな事を言い出しました。
「大歓迎よ!私たち夫婦には子供がいなかったので桜本くんを見ていると、こんな息子がいたらなあなんて思っていたのよ」
またいつでも遊びに来てねと見送られて
私たちはお部屋を後にしました。
「どういうこと?
文句を言うんだと言っていたのに…」
彼の真意を知りたくて、わたしは桜本くんを自分の部屋に招いてそう聞きました。
「実は僕…
小さい頃にお父さんを亡くしているんです…
母はその後、今の父と再婚して…
その方は資産家で
僕も母も大事にしてくれていますが…
脇坂さんの旦那さん…
亡くなった父の面影があったんです」
まあ!それでお線香を焚きあげることに理解してくれたのね…
わたしは感激して、思わず桜本くんをハグしてしまいました。