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淫夢鉄道の夜
第2章 ヤリサーのリーダーだった男
誰もいない改札の前にポツンとICカードをタッチする機械が立っていた。

秘境をゆくローカル線の駅としては風情のない光景だが、これも時代の流れだから仕方がない。友樹は、ウインドブレーカーの内ポケットからいつも使っているICカードを取り出し、ポンと機械にタッチして改札を通った。

5人掛けくらいの長椅子が1つだけ置かれたコンクリート剥きだしの小さなホームにオレンジ色の車輌が一両、博物館に展示されているかのように止っている。キハ40系気動車。国鉄時代に製造されたディーゼル車で、もうJRで使っているところはない。払い下げを受けた地方の私鉄でも退役が進み、年々見ることが難しくなっている車輛だった。

友樹は足早に近づくと、そっと車体に手を当てた。鉄の硬く冷たい感触が手のひらから伝わってくる。所々黒ずんだ塗装は、この車輛が歴戦の勇者であることを示していた。

友樹は労をねぎらうように車体を優しく撫ぜた。人間のために働いてきてくれたことへの感謝の気持ちを示す、友樹のいつものルーチンだった。
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