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契約的束縛・過ぎ来し方(すぎこしかた)のメモリー
第3章 メモリー仁科

(私の中の日本人の血なんでしょうか?)
母はドイツ父は日本で私はそのハーフ、父から聞いた日本は遥か昔の話だがどこか……片鱗でも話にあった日本が残っているとさえ感じてしまう。勿論違う部分の方が大きいが、この下町にはいまだ情緒というのだろうかそんなものが残っている、だからなのだろうかここに来ると居心地がいいと思うのは。
「……これは?」
ある一軒の店先で気になる物を見つけ私はそれをまじまじと見てしまう。
「おう、気になるかい兄ちゃん、それは江戸時代の行灯だ。昔はこうして油皿に油脂を入れ灯りを取っていた」
そう言って店主だろうか……その人は行灯の使い方を実演してくれた。
「和紙に灯りが映っても儚いだろ、だがな昔はこんな灯りで暮らしていてんだ」
「ですが風情があります」
「そうだろ? 江戸っ子はこの灯りの中で一喜一憂した、良いことも悪いこともな」
「昔の……名残ですね」
誘惑に負け一つ購入してしまった……使うことなど無いというのに。なぜか私の心を引き付けた行灯、この他のもあの店に行けば色んな物を買う羽目になってしまったが私の趣味、周りにはこう言っている。
「また今日も外出でしょうか盟主」
「なにか問題でもありますかルーク?」
「……お立場上こう頻繁に出られるのは」
「日本でしかも日本人をしている今の私に危険などありはしないと思いますがね」
「ですが……」
毎日とは言わないが数日おきに外出する度ルークはこうして渋い顔をして私を止めに掛かる。盟主は日本には居ないこれが前提なのは分かっていますが、この国そしてこの姿で盟主と認識する方が難解だというのにルークは態度を崩さない。

