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契約的束縛・過ぎ来し方(すぎこしかた)のメモリー
第4章 メモリー本郷

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良いとも悪いとも言えないが、俺の防衛大生活はおおむね普通に過ぎてゆく。こんな大学だ座学の他にも訓練課程があり、もちろん基礎から射撃訓練そして大型訓練、年に数回だが戦車をも持ち出して大々的にやるのが防衛大のしきたり。これを耳にすると今年も来たかと思う。ここで秀いたものを見せれば後々有利になるのだから周りの意気込みも凄い……だからこそ俺は見逃した、あいつらの思惑を。
訓練は小隊に分かれたチーム式、軍隊と同じと言ったほうが分かりやすいのか? それぞれ持ち場に分かれての紅白戦で今は俺たちが守備側。戦車からの砲撃予測地点を避け、隠れるために多数設置されている人工壕(洞穴のようなもの)の中に居る。
「本郷予定が変わった、前方一キロまでは安全圏だ」
「そこは着弾地点じゃなかったか?」
「だから変更になったと無線が来た、どうする前に進んだ方がいいと思うんだが」
「そうだな、砲撃がないんだったらこの先を進んだ方が相手陣地に近い」
「行くか?」
「あぁ」
なぜこの時俺は後方確認をしなかったのか? 斥候(偵察行為)として最前列に居たことも原因の一つ、そして周りと同じように功を焦ったのだろう、俺一人だけ前に進んでいる事に気付かなかった。
この辺りは丘陵地帯で日々訓練を受けているやつなら相手に見つかる事無く前進は可能、そんな俺もデカい体格を屈め目標地点まで辿り着いて一息。
(双眼鏡で見えるか?)
躰を伏せたまま腰の双眼鏡を取り出し相手陣地を確認、そこで見たのは……こちらに標準を合わせ終わっている……戦車。
「…………っ!」
咄嗟の判断で身を起こし全速力で人工壕へと走り出す、その少し後に『ドーーン!』という砲撃音!
(間に合わない!)
音共に見たのは……あいつらの含みある顔、そして後ろから来る凄まじい衝撃!
「うぁぁぁぁぁーー!」
衝撃と熱と爆風、俺は爆弾に巻き込まれ躰が宙に浮くほど吹っ飛ばされた。……そこで俺の記憶は途絶えている。

