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契約的束縛・過ぎ来し方(すぎこしかた)のメモリー
第4章 メモリー本郷

「んっ……」
「…………」
女が唇を寄せて来たが俺はキスなどする気はない、そもそも望まぬ性行為なんだキスなどしないだろ?
だが欲はなくとも女に触れていれば欲情はする、男はその気がなくても女を抱ける……いつからだろうかこんな考えになったのは。
(ボディーガードをやってから……)
犯罪スレスレの対象者を守る、日本のボディーガードなぞこんなもの。それとも暗い世界と言った方がいいのか? 俺が見たのは欲にまみれた対象者達、その中で俺の考えすら変わったのかもな。
目指していたものとは違うそれは理解はしている。もっと日の当たる場所でボディーガードを……そうは思えど叶わない願いだとて存在するのもまた確か、そして日本国内でそんな需要など少数なのは重々承知はしているんだ。
だからなのか? 俺の考えがこんなにも淡泊になってしまったのは?
今の俺は憎んだあいつらと同じ欲にまみれた世界の住人、悪と分かっていて対象者を守り酒こそ飲まんが女の誘いを受け入れる、これのどこに防衛大時代の俺が居る?
気のないせいで余計な思いにふけっていれば女はから『早く』というせがむ声、考えもここまでにして女を抱くしかないんだろう。

