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縛られたい
第11章 まりあさんの過去〜阿部
「大学4年の時に、
インフルエンザで診察してもらった時に、
熱でフラフラだったんですけど、
『結婚を前提に付き合って欲しい』って言われたんですよね。
少し治ってから、
もう一度診察に行った時に、
改めてその話をされたんです。
開業医としての仕事や論文とかで忙しくて、
気がついたらこんな歳まで独身だったけど、
病院の跡継ぎも欲しいから、
健康で頭脳明晰で素直な女性と結婚したいと考えていて、
私が最適だって言うんです。
付き合ってる男性も居なかったし、
そのまま大学院に行こうかなと思っていて就活もしてなくて、
そんなに私のことを思ってくださってるのなら、良いかなって思ってしまいました」


「ホントに素直だったんだね?」と言いながら、
危なっかしい処が心配になってしまう。


「大学は男子が多かったけど、
誰かと付き合うこともないままでした。
東大女子なんて、敬遠されちゃうし。
留学してた時も、挨拶のキスやハグはしても、
なんていうか…男の子と2人っきりで何かするとかは、
怖いし、そういうことは結婚してからするものだと思ってて…」


「俺だったら、
まりあさんが同じ大学に居たら、
放っておかなかっただろうな?」


「それでね、結婚を前提に付き合って欲しいと言われたけど、
キスを迫ってきたりとか、何かされたりとかもないままでした。
大切にされてるように思っちゃいました。
大学卒業した後に、既成事実を作ろうと言われて…」


「えっ?
どういうこと?」


「先に子供を作って、
結婚を認めざるを得ない状況にしてから、
私の母に結婚の話をしようって言われたんです。
私、素直って言うより本当に馬鹿だったんですよね。
そういうものかなって思ってしまって。
それで、言われるままに基礎体温を測って、
危険な日に呼ばれて…子作りしようってことになったんです。
今の私だったら、
それ、おかしいって思えるけど、
当時は変に説得されてしまっていて…。
本当に馬鹿ですよね?」


「んー。
洗脳されてたようなもんかもね?
母親とか、誰か親しい人に話したら、
それ、おかしいでしょって言われるだろうけど、
結婚を反対されるからって釘を刺して、
相談させないようにしてたんでしょ?
洗脳の手口だよ」


まりあさんは頷いた。
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