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縛られたい
第13章 出逢いは波のように〜まりあ
5月も半ばを過ぎた頃、
少し身体の異変を感じた。

食欲がないし、
吐き気もする。
生理も遅れている。


これって?
でも、まさか?


そう思いながら、
阿部さんに、
「あのね。
生理が遅れてるみたいなの」と言ってみると、
固まった後に、オロオロして涙を流し始めてしまう。


「え?
まだ確定したわけじゃないし、
想像妊娠かもしれないんだけど…?」と言っても、
あまり話を聞いてくれてない。


「すぐ、病院行こう!
何処に行けば良いんだ?」


「この前、診て頂いた女の先生が良いな。
とても感じが良かったし、
総合病院で他の科もあるし…」と言うと、
「じゃあ、行こう」と手を引っ張るので笑ってしまった。


病院の診察券も作ってあったので、
比較的スムーズに同じ先生に診察していただけて、
本当に妊娠していることが判った。


「ねっ?
ちゃんと妊娠出来たでしょう?
おめでとうございます」と言われる隣で、
阿部さんは涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっていて、
看護婦さん達にも笑われてしまった。



会計待ちをしている時だった。
私を座らせて待たせる形で、
阿部さんが会計カウンターに行っている時に、
「まりあちゃん?」と声を掛けられて見上げると、
そこには元夫が立っていた。


「えっ?
あの…どうして?」


「君の方こそ、どうしたの?
通院?
あ、少し話、したいんだけど、
これから良い?」と、
屈んで私の手首を掴んだ。


私は軽いパニックになってしまって、
少し過呼吸になってしまいながら、
阿部さんの方を見た。

まだ、お金のやり取りをしているみたいで、
こちらに気づいて貰えなくて、
軽い眩暈に襲われて、
座り込んでしまった。



周りのザワザワした声が遠くで聴こえるような気がした。
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