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縛られたい
第15章 元夫さんの手紙〜阿部
「どうして男の子になりたいの?」

「だって、パパが死んじゃったから…。
跡継ぎが居ないんだって。
お祖父様のお家、途絶えちゃうって言ってたの、
聴いたの。
女の子じゃダメだって」と震えながら泣き続ける。

「跡継ぎか。
僕もそれ、よく言われたな。
でもさ、出来なかったら仕方ないんだよ。
そんなこと、気にしちゃダメだよ?
まりあちゃんは、そこに居るだけで、
唯一無二だから…」

「ゆいいつむに?」

「そうだよ。
たった1人しか居ない、
大切な存在なんだよ?
お祖父様にとっても、
お母様にとっても、
何にも代え難い、
とても大切な存在なんだよ?」

…本当は、僕にとっても、
と言いたかった。
でも、それって、
キモいロリコンだよな?
そう思って言わなかった。

まりあちゃんの顔が、
まるで蕾が開くように、
或いは雲の切れ目から太陽が出るように、
明るくぱあっと晴れていった。

「先生、大好き」と言って、
僕の首に手を回して、
頬にキスをしてくれる。

「あ、ちょっと待ってて?」と言って、
病院で使っている用紙に、
まりあちゃんのお母様宛の手紙を書いた。

学校で生理の授業を受ける前に初潮を迎えて、
驚いて病院に来たこと。
説明をしておいたこと。
下着が汚れていたので、
勝手ながら替えの下着やナプキンなどを購入して、
身体を清潔にしてから装着させたこと。
不安そうな様子があったので、
お母様ともお話しされるようにということ。


書きながら、
「うん。嘘はついていない。
でも、少しズルい書き方だな」と思った。

「身体を清潔にして」

確かにその通りだけど、
正直なことを言うと、
僕は興奮していた。

温かいシャワーのお湯を出して、
ボディソープを手に取って指先でそっと股間を洗いながら、
僕はその感触を楽しんで、
そこに指先を挿れたいという気持ちをなんとか抑えていた。

本当なら、
「綺麗にしてあげるから」と、
上まで脱がせて洗いたいくらいだったけど、
歯止めが効かなくなるのを恐れて、
そうしなかっただけだ。

気が弱い男だ。

僕はそう思いながらその手紙を封筒に入れて、
「これ、お母様に渡してね?
それと、何か不安に思ったりしたら、
いつでもおいで?」と、
まりあちゃんに優しく言って、
頭をポンポンとしてから、
柔らかい髪を撫でた。
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