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縛られたい
第15章 元夫さんの手紙〜阿部
この辺りからは、
まりあさんから聴いている話でもあるけど、
読み進んでみる。


〜※〜※〜※〜※〜※〜※〜※〜※〜※〜

熱は下がったけど、
元々気管支が弱くて咳が酷く残ってしまったと言って、
まりあちゃんが病院に来てくれた。

夕方の時間だったから、
看護婦は帰って貰うことにして、
「お茶、飲もうか?
あっちで…」と言って、
母屋に連れていく。

考えてみたら、
泣きながら「血が出た」と来た時以来、
母屋に入るのは2回目だっただろう。


お手伝いさんにも、
「もう、良いから」と言って、
僕が紅茶を淹れようとすると、

「あの…私が淹れますね?」と、
一緒にキッチンまで来てくれた。

隣に並ぶと、
思ったより小さくて可愛らしい。

毎年、身長も測っていたけど、
標準よりかなり小さいのは知っていたはずなのに、
隣に並ぶこともこれまでなくて、
意識したことはなかった。


「フォートナム&メイソンですね?
私の家も、
良くこのお茶、飲みますよ」と、
僕を見上げて笑う。

知ってるよ。
前にクッキーなんかを貰った時に聴いて、
メモしておいたから。

ティーセットは、
まりあちゃんが好きだっていってたヤツ。

ウェッジウッドのピーターラビットので、
将来子供が出来たりすることを考えて、
半ダースずつ、他のカタチのヤツも全種類用意してある。

イヤープレートも、毎年、
まりあちゃんの誕生日にあわせて買っていた。


「わ。
凄い!
このカタチ、珍しいですね?
可愛い柄!」と言いながら、
食器棚を開けて観ている。


紅茶を淹れて、
トレイに載せたのを僕が運ぶ。

「病み上がりで、
重いもの、持たせるのは心配だから」と言うと、

「先生、いつも優しいですね」と微笑む。


いや、優しくするのはまりあちゃんだけにだから。
と、心の中で言うけど、
面と向かっては言えない。


猫舌のまりあちゃんの為に、
牛乳を持ってきてあげて入れると、
「先生は、入れないの?」と見上げて言うので、
自分のにも入れると、
まりあちゃんがかき混ぜてくれる。


そんな他愛ないことも嬉しくて、
そして、やっぱり少し興奮してしまう。
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