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縛られたい
第3章 ラブホでの出来事、そして〜阿部
「あ…ごめん。
俺、泣いちゃったよ」と言って、
身体を離すと、
泣いてるくせにムスコが勃ってしまっていた。


「うわ、最低だよ」と、
自分に突っ込んでしまう。


「えっ?」と言って、
視線を落とした渡辺さんが、
頬と耳を紅くする。


「えっと、これ、生理現象だから。
ほら、渡辺さん、可愛いし、
なんか、柔らかくて良い匂いするし。
胸とか当たったら気持ち良いしって…。
俺、何、言ってるんだ。
とにかく、ごめん。離れるから!」と言った。



「ホント、俺、性欲強いのかな。
すぐ、こうやって元気になっちゃうけど、
こいつ、可哀想に使う相手もいなくて、
自分でヤルしかないし。
妻はそういう処が鬱陶しかったり、
いやらしいオトコと思ってたのかな?
昔の妻は、渡辺さんみたいにモリモリとご飯食べて、
ニコニコしていて、
身体もふっくらと柔らかかったけど、
今はすっかり、細くて黒くて萎びているよ」


「でもそれ、
病気のせいでしょう?
そんな風に言ったら可哀想です」


「いや、言わないよ?
言わないし、そんな妻とも仲良くしようとしたけど、
きっぱり拒否されたんだよ」と瞳を閉じた。


「んー。
拒否したことにも理由があるかも。
とにかく、残された時間が少ないなら、
その時間を少しでも一緒に過ごした方が良いと思います」



一回り以上も下の渡辺さんに、
説得されて、俺はもう一度死期が迫った妻と向き合うべきなのかなと思うようになった。


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