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縛られたい
第1章 まずはパソコンから始めよう〜まりあ
「渡辺さん…でしたっけ?
何かのご縁だから、
昼メシ、ご一緒に如何ですか?」



私は多分、困った顔をしてしまったんだろう。



「あっ。
スミマセン。
こんなオジサンが若いお嬢さんに昼メシとか誘っても…
嫌ですよね?
失礼しました」
と、顎を掻きながら頭を下げた。



私は思わず笑ってしまって、
「美味しい定食屋さんがあるから、
ご一緒しませんか?」と言った。



駅とパソコンスクールとは少し離れた小さな定食屋さんに向かう。

そこのマスターとお母さんは、
結構長い付き合いだった。


「あら!
まりあちゃん、珍しいわね?
男性連れなんて!」と言いながら、
お母さんが緑茶と温かいおしぼりを出してくれる。


「駅前の量販店でパソコン買ったらね、
パソコンスクールの無料チケットくれたの。
偶然、そこでご一緒したんです。
えっと…阿部さんでしたよね?」


「何になさいます?」とお母さんが言う。

「お任せで!
阿部さんは?
好き嫌いとか、アレルギーとかなかったら、
お任せが楽しいですよ」と言うと、
私のイキオイに負けるように、
「じゃあ、それで!」と笑った。


「渡辺さん、入力、早かったよね?」


「ああ。
英文科だったから、英文タイプとかも使ってたし。
でも、パソコン、全然判らないんです。
だからスクール、ちょうど良かったです」


「俺もね、仕事でマックしか使わないから、
Windows、よく判らなくてさ。
でも、書類とかはWindowsで提出するのが多いから、
勉強しようかなと思って」と笑う。

一人称が、俺になってる。



トレイに載せられたランチが置かれた。


「これ、呑みたくなっちゃうヤツですね?」と私が笑うと、
阿部さんも「そうだね?」と言う。


阿部さんは笑うと子供みたいな顔になる。


私はご飯のおかわりをしつつ完食して、
手を合わせて「ご馳走様でした」と言うと、

「気持ち良い食べっぷりだね?」と笑われる。


「この身体は、一朝一夕じゃ出来ないんですよ?
毎日、コツコツと食べて、
こうなるんです」と私は笑った。


私…細くないから。
むしろ、ふっくらしてると思う。
まあ、学生時代までやってた運動のおかげで、
メリハリがついてるけど、
もう少し痩せたいところかな?


私の胸元をチラリと見て、
阿部さんは少し耳を紅くしていた。
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