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縛られたい
第6章 雪解けの気配〜まりあ
「2ページ目も、読んでみてください」と言われて、
便箋を捲ると、更に弱々しい文字で綴られていた。


『この手紙を持参するまりあさんが
まさとさんと再婚して
まさとさんと子供たちをみてくれることを願っています

その時は
賛成してあげてください

まりあさんは素晴らしい女性です』



「えっ?
あの…」

「これは?」

「これは…
優子さんの願望ですね。
生前、この話をされたこと、あります。
でも、阿部さんは、
優子さん一筋でしたし、
私も恋愛感情はなくて…。
この件については、
私からはなんとも申し上げられません」と淡々と言った。


お父様はその様子を見て、笑い出した。


「なんだ。
シェークスピアも真っ青な、
修羅場の三角関係かと思ったら!!」

「えっ?」

「まあ、こんなに可愛くて若いお嬢さんが、
うちの子持ちのやもめと再婚してくれる訳はないしな」

「子持ちとか、やもめとかはともかく、
阿部さんは優しくてきちんとされてますよ?
でも私は…、結婚は無理なので…」

「えっ?」

「私、離婚歴がありますし…。
それに子供も産めない身体なので、
結婚は諦めてるんです」

「まぁ!」と、
お母様が気の毒そうな顔をした。


「あ、私のことはどうでも良いんですけど、
お通夜と葬儀告別式の日時と場所、
こちらですので、
いらしていただけますか?」
と、白い封筒に入れた案内を渡す。


「そうだな。
伺わせて貰おうかな?
息子が嫌でなければ」

「是非、お願いします。
ゆりあさんと優斗くんも、
喜ぶと思います」と頭を下げた。



家を出る時、
阿部さんのお母様が急に母のことを訊いてきた。

「ねえ、渡辺さんのお母様って、
翠さん?」

「えっ?そうですけど…」

「やっぱり!
私、葬儀告別式に伺った時に、
あなたにお会いしてたわ?
参列者、たくさん居たものね?」

「まあ…その節は…」

「翠さんとは幼稚園からずっと同じ女子校だったわ?
母校で教鞭を取って、
晩婚で、すごく歳上の大学教授とご結婚されたのは驚いて…。
おまけにご主人様、亡くされたでしょ?
私も、息子のことでなんとなく居心地悪くて、
同窓会も行かなかったけど、
翠さんも忙しいのか、殆ど同窓会、
来てなかったみたいで、
たまたま、バラ園で苗を選びに行った時に再会してね、
時々お会いしてたのよ?」
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