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縛られたい
第7章 悪夢〜まりあ
「こんな時間だから、ここで仮眠しても良いですよ?
眠剤、出しておきましょうね?
眠れないといけないから」と言われたので、
お言葉に甘えて小さい病室のベッドで横になった。


産婦人科病棟なので、
赤ちゃんの声が聴こえたり、
深夜も廊下を歩く音が聴こえた。


薬が効いたのか、そのまま、朝まで死んだように眠ってしまった。


目が覚めると病室に阿部さんが居た。


「あれ?
ゆりあさんは?」


「頭を打ったから、念の為検査入院してるよ。
12時の検査終わったら帰れる。
同じ病院だけど、
病棟は違うんだ」


「優斗くんは?」


「昨日のことがちょっと衝撃的過ぎて、
熱を出しちゃって、家で寝てるよ」


「独りで?
可哀想。
急いで帰らなきゃ!」


「それより、渡辺さん、大丈夫?
もう少し早く帰れば良かったな」


「…」


「済まなかった。
ゆりあがあいつを家に入れたって…」


「ゆりあさん、騙されてたんです。
それに、お母様を亡くして、
独りぼっちになった気持ちになったのかも。
私、きっと阿部家にズカズカ、入ってるなって思わせちゃったんじゃないですか?
ごめんなさい。
ちゃんと距離感を保たないと…」と唇をかんだ。


「単なる雇用されてるだけの人間なのに、
図々しく家の中に入ったりして、
優斗くんとも仲良くしてたら、
なんか、仲間外れみたいに感じさせたんじゃないかなって。
やっぱり、何処か借りて、
そこから通うようにしますね?」と言うと、
阿部さんは私の手を握り締めた。


「あんなことがあった処、
戻りたくないよね?
俺、昨日帰宅して渡辺さんを見た時、
頭がパニックになって、
あいつを殴り殺しそうになったよ。
早く戻って来れなかったことも呪った。
はっきり判った。
俺、渡辺さんが好きだ。
だから、あいつが許せなかった。
ナイフで切られて…
レイプ…されたんだよね?
本当に辛かっただろうなって思って、
俺、なんとかしてやりたいけど、
何も出来なくて…」と、
阿部さんは私を抱き締めてポロポロ泣いてしまう。


「ごめん。
泣きたいのは渡辺さんの方だよな。
本当にごめん。
ゆりあのことも、ごめん」

涙と鼻水で、
阿部さんはそれ以上、話が出来なくなってしまった。
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