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冬雪記
第1章 はじまり
「……あなた……」

 予想だにしなかった夫の出現に、亜由美は動けなかった。

 昇一はずかずかとベッドに近寄る。

 驚いて動けずにいる隆昭の顔を、昇一は思い切り拳で殴りつけた。

 元々が華奢な隆昭は、体格の良い昇一に殴られベッドから勢い良く転げ落ちた。

 鼻血を流している。

 昇一は隆昭の顔を蹴った。

 呻きながら、隆昭は自分の顔を両手で覆った。

 昇一はがら空きになった隆昭の腹を蹴った。

 隆昭はからだを丸めて腹を守る。

 昇一は隆昭の背を蹴った。

 半屹ちのおとこを剥き出しのまま、隆昭は動かなくなった。

「あなた! 止めて! お願い、止めて!」

 亜由美はベッドから下りると、昇一の腰にすがった。

 昇一は亜由美の頬を力任せに張った。

 亜由美は床の絨毯の上に転がる。

「何が止めてだ! この別荘はお前のスケベ宿じゃないんだぞ!」

 昇一は亜由美に向かって怒鳴る。

「お前のやる事為す事はな、全部お見通しなんだよ! この雌豚が!」

 昇一は言うと、亜由美の腹を蹴りつけた。

 亜由美は激痛で気を失ってしまった。
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