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ノーサイドなんて知らない
第1章 ジェントルマン(クマ)との出会い
新大阪から最終ののぞみに飛び乗った。

…だから、取引先とお付き合いで飲むのは、
嫌なのよね。

そう思いながら、
スマホで確保した車両まで、
重たいスーツケースを引っ張りながら進む。

通路側を取ったつもりだったのに、
窓際だった。


…はぁ。
今は隣、居ないし、
この車両、空いてるから、
大丈夫かな?


と思う。


隣に知らない男性とかが座って、
降りる時とか立ちにくい奥の窓際の座席は嫌だなと思いながら、
取り敢えず足元に無理矢理小型のスーツケースを置いて、
なんとか座った。

私の力と身長では、
とても上の荷物入れには置けない。
でも、パソコンとかが入ってるから、
座席から離れた端の座席後ろとかにも放置出来ない。

まあ、狭いけど、
なんとかなるかなと思った。


出発間際に、思い掛けず大人数の乗客が入ってきた。
団体予約なんだろう。

やたらガタイが良い、
スーツ姿の人たち。

でも、私、
スポーツに興味がないから、
どんな団体なのかも良く判らなかった。


隣に、そのうちの1人が座った。


「これ、上に載せますか?」と、
私のスーツケースを指差しながら訊かれた。

「重たいですが、お願いできますか?」と言ってみると、
「勿論!」と荷物入れに置いてくれた。


間にある折り畳み式の肘掛けが窮屈そうだったので、
上げてから自分はなるべく窓際の方に座るようにすると、
「ありがとうございます」と言った。

近すぎて顔は見れなかったし、
見ても覚えられないけど、
低くて落ち着いた声だった。


他の座席の乗客が、ざわついているようだったけど、
私はあまり気にせず、
本を出して読み出した。


そして、名古屋を越えた頃には少しウトウトしてしまっていて、
「次は新横浜〜」というアナウンスでビクっとして目を覚ますと、
本を床に落としてしまった。


隣に座っていた男性が手を伸ばして拾ってくれるので、
お礼を言って、
「あの…次で降りるので、
荷物を降ろして頂けますか?」と言うと、
「勿論!」と笑って軽々とスーツケースを降ろしてくれて、
「僕も次で降りるんだ」と言って、
大きいスポーツバッグみたいなものを降ろした。

何か、ロゴマークみたいなものが入っていたけど、
ピンと来なかった。


「ご親切に、ありがとうございます」と言うと、
「どういたしまして」と笑った。
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