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ノーサイドなんて知らない
第3章 知らないのは私だけ?
新しい1週間が始まった。

今週から新しい論文の翻訳に取り掛かることになっていた。

出張用のスーツケースに入れっぱなしだったパソコンや辞書、参考書籍を引っ張り出して、
仕事部屋に戻していく。

朝食はあまり食べない。

焙じ茶を淹れたマイボトルを用意して、
8時から仕事を始める。

11時ごろ、ブランチを取って、
3時ごろまでまた仕事をして、
リビングかベランダで軽い休憩をする。
そしてまた、6時ごろまで仕事をした。

夕食を取って、
ピアノを弾くか、
読書をするか、
何か手仕事をする。

締め切りで忙しい時は、
その後も仕事をすることもある。

その後、のんびりお風呂に入ってから眠る。


その繰り返しだった。

食事は、日曜に作りだめした常備菜をちょこちょこと、
日によってはメインにお魚がお肉を調理する。

パンは日曜に自分で焼くことが多いけど、
昨日、全部熊野さんが食べてしまったから、
また、焼こうかなと思ったりした。


一目惚れした。


熊野さんの言葉を思い出して、
そのことをぼんやり考えたりした。

外見?

いやいや、そんな外見ではない。
服装も地味。
背が低いのに、
靴もぺたんこ。
お化粧もしてない。


私は顔を覚えられないけど、
熊野さんは、目が悪いのかもしれない。



ラグビーって、どんなスポーツなのかな?

仕事用の原稿を書くのに使っているパソコンで、
検索してみたけど、
あんまり良く判らなかった。


そして、ついでに熊野さんの会社のホームページを検索してみたら、
ラグビー部の紹介ページが出てきた。

選手紹介に、熊野さんの名前もあった。

国立大学の医学部から入部して2年目とあるから、
5年生に上がる前に社会人になったのかな?

189センチ…私と40センチ近い身長差なのね?


ついでに、熊野さんの名前で検索してみると、
顔写真や試合の時の写真、
試合の記録やファンの方のブログなんかもたくさん出てきた。


えっ?
なんか、知らないのは私だけ?

ひょっとして、有名なスポーツ選手なのかな?



そんなことを考えていたら、
携帯が鳴ってびっくりしてしまった。

勿論、熊野さんからだった。
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