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私じゃなくても
第2章 溢れる涙
side ワンちゃん


「えーねん、疲れたやろ?
もうちょっと遠回りした方がよかったかもなぁ。
これからまた大変なんやから」

えっ
なんて優しい言葉なの…
やだ、どうしよう
私、泣いちゃう。

突然の優しい言葉に
思わず涙が込み上げ
でもそれを我慢しようとして
自分の顔が歪むのがわかる。

それを早瀬さんに見せたくなくて
私は急いで
バックミラーから視線を外した。

「す、すみません。
急いで準備します」

「ゆっくりでかまへんよ。
千華ちゃん寝てるみたいやし」

「いえ、こんな時間になってしまって…」

早瀬さんは
ウトウトしてしまった私を
責めることなく
急きたてることもない。

聞こえてくるのは
優しい言葉ばかりで
せっかく喉の奥で堰き止めてる涙が
また込み上げそうになる。

それをまた私は
必死で堪えながら車から降りると
眠っている千華を起こさないように
静かに
ゆっくりと千華を抱き上げた。

「よう寝てるな」

早瀬さんは
頼まなくても私の荷物を持ち
千華の顔を覗き込みながら
そう小声で囁いた。

そして
先に階段を上がるように
ジェスチャーをして見せ
私が車から離れると
『バタン』と
千華を起こさないように
控えめな音で車のドアを閉めた。

その音に
私の胸はぎゅっと熱くなり
千華を抱く手にも
力がこもった。

でも
まだ泣いちゃダメ。
部屋に入るまで
絶対に泣いちゃダメ。

そう自分に言い聞かせながら
3階までたどり着くと
私は急いで鍵を開け
そして後ろにいる早瀬さんに
振り向いた。

「もう、大丈夫です。
荷物ありがとうございました」

「あ、うん。
奥村さん
出張いつまで?」

「明後日です」

「ほな、チャイルドシート
あのままにしとくから
何かあったらいつでも
ピンポンしてな」

「ありがとうございます。
ほんとに
助かりました。
じゃあ」

「あ、うん」

失礼だったかも知れない。
もっとちゃんと
お礼を言わなきゃ
ダメだったと思う。

でも私は
とにかく早瀬さんに見られない場所へ
駆け込みたかった。

だって…

「うっ…っ、ううっ……」

もう我慢できそうになかったから。


私は玄関の中に入ると
すぐに右手で口元を覆い
そして
声を殺しながら
ずっと我慢していた涙を流した。
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