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第4章 管理人

「あのぉっ…。すみません。また少し支払いの方を待ってもらえますか…？」

「またですか？栗山さん…。さすがにこう何度も滞納されると困るんですよね…。」

アパートの管理人をしている狩野孝宏の前で小さく縮こまる栗山千里。ショートカットにした髪型。スレンダーな割りに胸やお尻はきちんと出ている。顔も目鼻立ちがしっかりして美人である。しかし、今はその顔は疲れきって覇気もない。

「栗山さん…。あなたの事情はよく知ってるけど、先月も遅れて、今月もはね～。さすがに…。」

「すみません。あと一週間待っていただければ…。必ず払いますから…。」

「そう言われてもね～。」

栗山千里は早くに両親を失くしている。その両親が借金をしており、身寄りのない千里は１人必死に借金を返しながら、生活してきた。狩野は両親と知り合いだったこともあり、自分が管理人をするこのアパートに安く千里を住まわせてやっている。しかし、度々滞る家賃に狩野もかばいきれなくなり始めた。

千里は朝から夜まで仕事を掛け持ちしながら、なんとか借金を返し続け、ようやくあと少しで完済するところまできた。しかし、不況の煽りを受け、一つ仕事を失ってしまう。慌てて別の仕事を入れるが、給与が出るのはまだ先になる。狩野には通常の半分の家賃で住まわせてもらって、さらに滞納するのは心苦しいが、なんとかお願いする。

「お願いします！図々しいのは承知しています。でも、もうちょっとだけ待っていただけませんか？」

「今月待ったとして来月は？来月はちゃんと払えるの？」

「そっ、それは…。」

「両親のこともよく知ってるし、君の状況はよくわかるけどさ。私は管理人であって、大家じゃないんだよ？君が滞納してる分を誤魔化すの大変なんだよね～。」

「すみません…。」

千里も薄々気づいていたが、どうやら狩野は千里が滞納した分を肩代わりしてくれているようだった。未だ現金支払いが可能な古いアパートだからこそできることなのだろう。

「ねぇ、あんまり聞かないほうがいいんだろうけど…。あと借金いくら残ってるの？」

「えっと…。それは…。」

「言いたくないかもしれないけど、これからの家賃のこともあるから教えてくれる？」

「はっ…はい…。あと80万ほど…。」

「80万！？頑張ったね～。一千万以上あったはずなのに…。えらいね。でもあと80万どうするの？」