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奸計〜罠に堕ちた女達〜
第32章 肝試し
「ね、ねぇっ!?み、見たっ!?に…二階の窓で人影が動いたわっ!!」

金切声を上げてそう主張する千恵美。迫真の演技で身体をガタガタ震わせている。しかし、残念ながら、千恵美の言う影を見た者は他にいなかった。

「おいおい…。肝試しを盛り上げるのはいいが…さすがに早すぎんだろ…?もうちょい溜めてからのほうが雰囲気出るぞ?」

笹山が呆れたように言う。

「ち…違う…。本当に…見えたの…。車のライトに照らされて…動く人影が…。や…ヤバいよ…。ここ…。マジのヤツじゃ…。」

それでも千恵美は顔面を真っ青にして見たと主張する。

「いがぁ〜い。望が怖がるならわかるけど、千恵美はそういうの似合わないよ〜。ていうか、感情入りすぎぃ〜。私も怖くなっちゃう〜。」

茶化すように芙美は言いながら、笹山にさらにくっつく。
ただイチャつきたいようにしか見えない。名前を出された望は軽く不安な顔をしている。

「で…でも…。幽霊とかじゃなくて…不審者とかがいたら…。こういうとこ…隠れやすいし…。前もそういう事件あったじゃない?」

望は千恵美、芙美の意見を否定せず、新たな不安要素を上げる。実際、去年、刑務所から逃げ出した男が廃屋に隠れて数ヶ月逃亡するというニュースが世間を騒がせた。

「はん!逆に幽霊じゃなかったら、俺がボコボコにしてやるから、安心しろよ!」

笹山が筋肉を見せつけるように言う。

「そうそう。笹山に任せて、一緒に逃げればいいさ。だから、千恵美。心配するなって。」

加藤がさり気なく千恵美の肩を抱く。

「う…うん。」

皆の言葉に渋々納得したように頷く。そこで荒川が口を開く。

「で…?どうする?中に入ってみるか?」

「ああ、行こうぜ!肝試し始めるぞ!」

加藤が元気良く声をかけ、全員が車を降りる。

「おおっ…!なんか…雰囲気あるな…。」

「ていうか…ありすぎ…。マジで映画とかにも出てきそう…。」

加藤と千恵美が呟く。6人の前に佇むホテル。色がくすみ、あちこちの窓ガラスが破れ、朽ち果てた門。鬱蒼と茂る周りの森。見る者を圧倒するその異様な景観が暗闇の中で浮かび上がっていた…。

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