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桜が咲く頃逢えたら
第10章 急転直下
「勉強したいけど、
参考書とか、全部持って来てないから、
家に帰りたい」

そう言うと、ママは少し困った顔をした。

「あら。
ご近所さんとのパーティー、
来週だし、
パパも仕事終わって今日、やっとこっちに来るから…」と言った。


「予備校も後半の授業も始まるから、
僕の車で送りがてら、
先に戻りましょうか?」と、安西くんが言ってくれる。


「あら。
だったらお願いしても良いかしら?
タロウだけ、先に連れて帰る?
瑞樹さん、居ないと、
寂しがるでしょ?」と言うので、
タロウだけ連れて、安西くんの車で逗子に戻った。




「顔色悪いけど、大丈夫?」と私の頬にそっと触れながら、
「独りにさせたくないな。
リビングで寝るから、
ここに泊まっても良い?」と言われる。


確かに、広すぎる自宅に独りは寂しく思えたので、
その日は泊まって貰うことにした。


「あのさ…。
生理、止まってるんじゃない?」と言われて、
息が止まりそうになる。


「ほら、寝込むほどだったり、
貧血になったりとかが、
この夏休み中、一度もないよね?」


確かにその通りだった。


「明日、試薬、買ってきてみる?
それとも、病院、行く?
あいつには連絡したの?」と、
心配そうな顔をする。


「まだ…。
忙しいみたいで、
電話も出来なくて…」


「忙しいのと、
身体のことは、別だよ?
電話してみたら?」と、
少し怒った顔をされてしまう。


私はバッグの中のポーチに入れているスマホを取り出して、
電源を入れる。

LINEの返信はなくて、
既読にもなっていない。

留守電もなかった。


恐る恐る電話をしてみたけど、
電波が届かない場所にいるか、電源が入っていないという機械の音声が流れる。


「LINEに、見たらすぐに電話してって書いたら?」と言われてしまって、
涙目になってしまう。
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