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桜が咲く頃逢えたら
第10章 急転直下
夕方、安西くんは前日と同じように百貨店の地下で買ったと思われるデリのお惣菜と、
とても綺麗な薔薇を抱えて戻ってきた。

少し強張ったような顔をしていて、
私は少し怖くなってしまった。


「あの…江川さんは何て?
亮平さんは?」と訊くと、

「まずは少しこれ、食べようね?
看護婦さんに訊いたら、お昼も夕食も殆ど食べれなかったって?
ちゃんと食べないと、
身体が元に戻らないよ?」と言って、
お惣菜を並べてくれる。


「僕が食べさせてあげようか?」と戯けた顔でいうので、
「大丈夫。
食べます…」と言って、
少しずつ口に入れていく。


1/3ほど何とか食べると、
「じゃあ、後は僕が食べるね?」と笑って、
ガシガシと食べていった。


お手洗いに行くのも掴まりながらで、
ついでに歯磨きをして、
扉を開けると、
心配そうに安西くんが待っててくれてる。

支えて貰いながらベッドに横たわると、
「電気、消すね?」と言って、
自分のベッドを私のベッドに近づけて、
手をそっと握ってくれた。


「あのね…。
亮平さん、重い病気なんだって。
それで、入院してるから会えない。
携帯も使えなくて、
多分電池切れたままじゃないかって…」


「えっ?
そんな…。
会いに行きたい」


「そんな身体じゃ、無理だよ?
かえって心配掛けちゃうでしょ?
だから、安静にして、
ちゃんと栄養つけて、
治ったら、お見舞いに行こうね?」


「赤ちゃんのこと、
話せないの?」


「んー。
亮平さんの状態も、あんまり良くないみたいだから、
もうちょっと安定してから話した方が良いみたいだよ」


震えと涙が止まらない私を、
安西くんはそっと抱き締めて背中を撫でてくれる。


「それでね。
瑞樹ちゃん、本当に子供を産みたいなら、
今は亮平さんに出て来てもらって、
ご両親にその話をすることも難しいから…、
僕との間に出来たって言わない?
このまま、隠し続けること、
出来れば良いけど、
もし、バレてしまったら、
本当に堕ろしなさいって言われるでしょ。
今、積極的にそう言う必要はないかもしれないけど、
そういう局面になったら、
そう説明しない?」
と、安西くんは静かに言った。
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