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桜が咲く頃逢えたら
第11章 暗闇の中へ
次にあった記憶は、
白い部屋のベッドに横たわって見える天井。
気遣うようないくつかの顔。
点滴がぶら下がったスタンド。
モニターから聴こえる機械的な音。
嫌だ。
何も見たくないし、聴きたくない。
また、深い眠りに落ちていくと、
懐かしい亮平さんが遠くで笑っていた。
りんくんと手を繋いで、
もう1人を抱っこしている。
振り返って向こうに言ってしまう。
やだ。
行かないで?
私も一緒に行く。
でも、声が出ない。
脚も動かない。
叫び声を上げた気がしたけど、
それは気のせいだったのかもしれない。
ハッと目を覚ますと、
安西くんが手を握って泣いていた。
「月(るな)ちゃんが…」
「えっ?」
「亮平さんが、
月(るな)ちゃんとりんくんと一緒に…」
「…」
「私を置いて行ったの。
私、独りぼっちになったの?」と、
声を絞り出しながら、
涙を流してしまうと、
安西くんは強く手を握って、
「独りぼっちじゃないよ。
僕はずっと一緒に居るから」と言う。
ドアが開くような音がして、
ママとパパの声が聴こえたけど、
私はまた眠りについた。
もう一度、亮平さんに会いたかったけど、
夢でも会うことは出来なかった。
何日経ったかは判らなかったけど、
覚醒している時間が少しずつ増えていった。
ママが居るか、
安西くんが居ることが多かったけど、
私は声が出なくなってしまったのか、
何も話せなかった。
パパが来て、
安西くんと安西くんのお母様と何かを話していることもあったけど、
何を言っているのかも聴こえないし、
理解も出来なかった。
安西くんがパパに頭を下げているのをぼんやり見ながら、
どうして安西くんがパパに謝っているのかも判らなかった。
モニターみたいな機械が外されて、
点滴も外されたけど、
私は独りで歩くことも出来なくて、
お手洗いも入浴も、看護婦さんにお願いしなければいけなかった。
何がどうなっているかも判らないまま、
リハビリをするようになった。
マッサージされたり、掴まり歩きの練習をしたけど、
腕にも脚にも力が入らなくて、
思うように歩けない。
車椅子に乗って退院したのは、もう12月になっていて、
病院から向かった先は、
紘子さんと住んでいたマンションだった。
白い部屋のベッドに横たわって見える天井。
気遣うようないくつかの顔。
点滴がぶら下がったスタンド。
モニターから聴こえる機械的な音。
嫌だ。
何も見たくないし、聴きたくない。
また、深い眠りに落ちていくと、
懐かしい亮平さんが遠くで笑っていた。
りんくんと手を繋いで、
もう1人を抱っこしている。
振り返って向こうに言ってしまう。
やだ。
行かないで?
私も一緒に行く。
でも、声が出ない。
脚も動かない。
叫び声を上げた気がしたけど、
それは気のせいだったのかもしれない。
ハッと目を覚ますと、
安西くんが手を握って泣いていた。
「月(るな)ちゃんが…」
「えっ?」
「亮平さんが、
月(るな)ちゃんとりんくんと一緒に…」
「…」
「私を置いて行ったの。
私、独りぼっちになったの?」と、
声を絞り出しながら、
涙を流してしまうと、
安西くんは強く手を握って、
「独りぼっちじゃないよ。
僕はずっと一緒に居るから」と言う。
ドアが開くような音がして、
ママとパパの声が聴こえたけど、
私はまた眠りについた。
もう一度、亮平さんに会いたかったけど、
夢でも会うことは出来なかった。
何日経ったかは判らなかったけど、
覚醒している時間が少しずつ増えていった。
ママが居るか、
安西くんが居ることが多かったけど、
私は声が出なくなってしまったのか、
何も話せなかった。
パパが来て、
安西くんと安西くんのお母様と何かを話していることもあったけど、
何を言っているのかも聴こえないし、
理解も出来なかった。
安西くんがパパに頭を下げているのをぼんやり見ながら、
どうして安西くんがパパに謝っているのかも判らなかった。
モニターみたいな機械が外されて、
点滴も外されたけど、
私は独りで歩くことも出来なくて、
お手洗いも入浴も、看護婦さんにお願いしなければいけなかった。
何がどうなっているかも判らないまま、
リハビリをするようになった。
マッサージされたり、掴まり歩きの練習をしたけど、
腕にも脚にも力が入らなくて、
思うように歩けない。
車椅子に乗って退院したのは、もう12月になっていて、
病院から向かった先は、
紘子さんと住んでいたマンションだった。