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桜が咲く頃逢えたら
第11章 暗闇の中へ
バスタオルでふんわり包み込んでくれてから、
バスローブを羽織らせて、
転ばないようにとソファまで抱えて運んでくれると、
紅い顔でショーツとナプキンを渡した安西くんは、
「ここなら危なくないから、
自分で履けるかな?
ナプキンって、サイズあるみたいだけど、
これで大丈夫?」と言って、
「白湯、作ってくるね?」と、キッチンに行ってしまった。


私はノロノロとショーツを履いてナプキンを当ててから、
クッションを抱き締めて目を閉じてみる。


「このくらいの温度なら飲めるかな?」と、
マグカップを2つ持って、テーブルに置くと、
「隣に座っても良いかな?」と優しい声で言った。


そして、私の肩に手を回して、
すっぽりと抱き締めると、
「月(るな)ちゃんて?」と静かに私に問い掛けた。


「月(るな)ちゃん、私の赤ちゃんよね?
お腹にいた筈なの。
でも…もう居ないの?
これ、生理痛よね?」と口にすると、
身体が震えてしまう。


「ずっと、夢の中に居たみたいな感じがする。
大切なことも思い出せなくて…。
月(るな)ちゃんも、夢なの?」


見上げると、安西くんも泣いている。


「ううん。
確かに月(るな)ちゃん、お腹に居たのよ?
流産しそうになった時、
安西くんが病院に連れて行ってくれたでしょう?
でも…どうして?
亮平さんは何処に行っちゃったの?
どうして亮平さんが病院に連れて行ってくれなかったの?」


フラッシュバックするみたいに、
断片的な映像が浮かんでは消えた。


「そうだった。
亮平さん、病気になってしまったって…。
それで、病院に連れて行かれたの。
もう可哀想だから、
生命維持装置を外すって…。
それで私…。
どうしたのかしら?
頭…痛い…。
安西くん、私、どうしちゃったの?」


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