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桜が咲く頃逢えたら
第11章 暗闇の中へ
まだ空気が冷たい中、
逗子の実家に向かった。
安西くんの車は、車椅子が乗るサイズのものになってたけど、
その日は松葉杖に掴まりながら、独りで歩いた。
予めママにお願いしていたので、
パパも居てくれた。
パパは視線を逸らすようにしながらも、
少し心配そうに私を見てくれてた。
「アップルパイ、焼いてきたの」と安西くんから渡して貰って、
ママに紅茶を淹れて貰う。
カールが私の足元に座って、
心配そうに脚を舐めてくれるので、
くすぐったくて笑ってしまった。
誰も話し始めないので、
私がそっと話し始めた。
「パパ、話があるの」
「あんまり聴きたくないな」
「大切な話なの」
ママは心配そうに手を握り締めている。
「安西くん、嘘を言ってたの」
「えっ?」
「赤ちゃんの父親、安西くんじゃないのに、
安西くん、私と赤ちゃんを守る為に、
嘘を言ってたの」
パパがポカンとした顔をする。
「安西くんと私、
そういうこと、してないもの」
「えっ?」
「安西くん、私のことを、
本当に大切にしてくれていて…」
私は涙が止まらなくなってしまって、
言葉が続かない。
「パパ、ごめんなさい。
私、亮平さんのこと、大好きで、
どうしても死んじゃったりんくんの代わりに、
弟が妹を産んであげたかったの。
でも…絶対に許して貰えないと思ったら、
流産しそうになって…。
軽井沢から先に戻った時よ?」
パパは驚いた顔で、安西くんを見る。
「安西くん、亮平さんの子供だって知ってるのに、
私が産みたいって言ったら…。
パパに反対されて、中絶させられないように、
内緒にしてくれて、看病してくれて、
もしもバレたら自分が父親だって言うからって…」
パパの手をママが強く握ってるのが見える。
「あの日、流産しちゃった後のことは、
覚えてないけど、
きっとパパに殴られたりしたんじゃないかしら?」
「殴られてないよ?」と、
安西くんは笑う。
「殴ってはないけど、
出て行ってくれと言って、
追い出したよ」と、
パパは静かに言った。
「私、安西くんに甘えてばかりだったけど、
誤解されて、
悪者になってるのだけは許せなくて。
パパ、悪いのは私なの。
安西くんは…」と言いながら、
溢れる涙が止まらない。
逗子の実家に向かった。
安西くんの車は、車椅子が乗るサイズのものになってたけど、
その日は松葉杖に掴まりながら、独りで歩いた。
予めママにお願いしていたので、
パパも居てくれた。
パパは視線を逸らすようにしながらも、
少し心配そうに私を見てくれてた。
「アップルパイ、焼いてきたの」と安西くんから渡して貰って、
ママに紅茶を淹れて貰う。
カールが私の足元に座って、
心配そうに脚を舐めてくれるので、
くすぐったくて笑ってしまった。
誰も話し始めないので、
私がそっと話し始めた。
「パパ、話があるの」
「あんまり聴きたくないな」
「大切な話なの」
ママは心配そうに手を握り締めている。
「安西くん、嘘を言ってたの」
「えっ?」
「赤ちゃんの父親、安西くんじゃないのに、
安西くん、私と赤ちゃんを守る為に、
嘘を言ってたの」
パパがポカンとした顔をする。
「安西くんと私、
そういうこと、してないもの」
「えっ?」
「安西くん、私のことを、
本当に大切にしてくれていて…」
私は涙が止まらなくなってしまって、
言葉が続かない。
「パパ、ごめんなさい。
私、亮平さんのこと、大好きで、
どうしても死んじゃったりんくんの代わりに、
弟が妹を産んであげたかったの。
でも…絶対に許して貰えないと思ったら、
流産しそうになって…。
軽井沢から先に戻った時よ?」
パパは驚いた顔で、安西くんを見る。
「安西くん、亮平さんの子供だって知ってるのに、
私が産みたいって言ったら…。
パパに反対されて、中絶させられないように、
内緒にしてくれて、看病してくれて、
もしもバレたら自分が父親だって言うからって…」
パパの手をママが強く握ってるのが見える。
「あの日、流産しちゃった後のことは、
覚えてないけど、
きっとパパに殴られたりしたんじゃないかしら?」
「殴られてないよ?」と、
安西くんは笑う。
「殴ってはないけど、
出て行ってくれと言って、
追い出したよ」と、
パパは静かに言った。
「私、安西くんに甘えてばかりだったけど、
誤解されて、
悪者になってるのだけは許せなくて。
パパ、悪いのは私なの。
安西くんは…」と言いながら、
溢れる涙が止まらない。