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桜が咲く頃逢えたら
第13章 桜が咲く頃逢えたら
「どれ、駐車場まで見送りますよ」と、
住職様が一緒に立ち上がると、
玄関の棚に置いてある花鋏を手にした。


そして、庭先にある桜をひと枝切ると新聞紙に包んで渡してくださった。


「まだ五分咲き前か。
少しずつ満開になり散っていきますが、
季節になるとまた、変わらず花が咲き、
散って、実もつけます。
桜を観に、
またお2人でいらしてください。
いや、3人でかもしれませんな」


桜の枝を胸に帰宅して、
リビングのテーブルに生けた。


袋から小さな箱を出して開けると、
美しいダイヤモンドの指輪が入っていた。

いつか、お揃いの指輪を買ったお店で選んでくれたのはすぐに判った。

「嵌めてあげたら?
亮平さんからの最後のプレゼントでしょ?」と言われて、
右手の薬指に嵌めたままだった亮平さんからの華奢な指輪に重ねてみた。


「瑞樹ちゃんの小さな手にぴったりだね?」と言って、
手を握り締めてくれる。


「良いの?
気にならないの?」と言うと、

「亮平さんに、
瑞樹ちゃん、貰うよって言った時にね、
絶対守るからって約束したんだ。
亮平さんのこと、大好きだっていう瑞稀ちゃんを、
丸ごと貰うからって…」
と言いながら、
安西くんは泣いていた。


「勿論、その言葉が届いてたかどうかは、
判らなかったけどさ」


「悠介さん、ありがとう。
私…本当に幸せよ?」と言って、
首に腕を回して私から抱き締めてキスをした。


安西くんはキスを返しながら、
「したいけど…瑞樹ちゃん、あのさ。
生理、来てる?」と瞳を覗き込むように言った。


「あ…。
ずっと不規則みたいで…。
でも、今月はまだ、来てないの」


「ひょっとして…?」


「どうかしら?」


「あのさ。
心配だから、明日、病院に行ってみない?」


頷くと、
「じゃあ、今晩は、
ちょっと我慢かな?」と言って、
そっと髪と背中を撫でてくれた。
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