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桜が咲く頃逢えたら
第2章 魔法のキスで恋に落ちた
その時、携帯のアラーム音が鳴った。

固定電話ルーティンの時間になる。


「ちょっとごめんなさい。
一度家に帰ります」と言って、
紘子さんを探すけど見当たらない。

仕方なく、そのままお店を出た。


マンションの前まで来た処で、
後ろから声を掛けられてびっくりしてしまう。


「えっ?亮平さん?」

「思ったより脚が早くてびっくりした。
ここに住んでるの?
良いマンションだね?」

「えっ、あの…」

「夜だし、心配でさ。
前に近いって言ってたから上着置いてきたら、
結構寒いな」

それは、そうだろう。
多分、Tシャツの上にコットンのシャツを羽織っているだけだ。

「トイレ、貸してくれないかな?
ヤバい。
漏れそう」と言われて、
「あの…他人は部屋に入れないことにしていて…」
と言うと、
「頼むよ?お願い?」と更に言われたので、
仕方なく「どうぞ…」と言って、
エントランスを開けて中に入る。


エレベーターで最上階まで登って、
部屋のキーを開けてスリッパを出した。


「お手洗いはこちらですから…」と、
廊下手前のドアを指差して、
私は洗面所で手を洗ってうがいをしてからリビングに入る。


7時55分。
結構ギリギリの時間だった。


「ありがとう」と言って、
リビングに顔を覗かせて、
リビングを見回す。


「綺麗にしてるね?
何で帰って来たの?」

「えっと…8時から9時の間に、
実家の両親から電話が掛かってくるんです。
時々、紘子さんのお母様からも。
あ、紘子さんと私は、
ルームシェアしてるんです。
だから、この時間は基本的に自宅に居るようにしてます」と説明する。


「今夜はその後、店に戻るよね?
それまで、ここに居ても良いかな?
送って行きたいし」


「えっ?
別に構いませんけど。
コーヒーかなにか、淹れますか?」と言うと、
嬉しそうな顔で笑った。
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