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桜が咲く頃逢えたら
第3章 初めての夜
「あれ?
瑞樹、そんな中に入って…。
こっちおいで?」と亮平さんに呼ばれる。

そっとタロウの頭を撫でてからゲージから出て、
洗面台で手を洗ってから和室に入った。


「僕の方が先にみーちゃんと寝たのにな?」と江川さんが言う。

「寝たって、文字通り寝ただけで、
セックスした訳じゃないよな。
別にしてても良いよ。
俺が上書きするから」と、私の手を握りながら、
亮平さんは私の顔を覗き込んだ。

「なんで、亮平なんだよ。
みーちゃん、こいつのどこがいいんだ?
まあ、ガタイは良くてルックスも良いけどさ。
離婚はするし、
コドモもいるし、
多分、稼ぎも僕の方が良いよ?」

「判らないんです。
でも…。
なんとなく、惹かれてしまって」


紘子さんの声が途絶えて、
静かになったと思ったら、
モノを投げるような音がして、
「健さんの馬鹿!!」という大きな声がして、
紘子さんが怒りながら部屋から出て来た。


「酷いの!
健さんたら、
結婚しててコドモも居るって。
独身だって言ってたのに!」
と言いながら、服かなんかを投げつけて、
和室に来ると、
「江川さん達も知ってたの?
なんで教えてくれなかったのよ?」と言って、
そのまま、バッグを拾って出て行ってしまった。


ジャンボさんがノロノロと出て来て、
肩をすくめた。

「日曜日に会いたいって言われて…。
子供の誕生日だから無理って言ったら怒りまくって…。
言ったつもりだったけど…。
なんか、スミマセン。
帰ります」と言って出て行こうとした。


「あ、僕も帰るよ。
みーちゃんに振られたから。
僕は独身、初婚で社長だから、
条件は良いと思ったんだけどな。
バツイチの亮平に負けたよ」と笑って、

「亮平に飽きたら、
戻って来てね?」と言うと、
そっと私の手の甲にキスをして、
江川さんはジャンボさんと出て行ってしまった。
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