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桜が咲く頃逢えたら
第5章 多忙だから放置だなんて大丈夫なの?
「これ、お母様に…。
瑞樹さんと2人で作ったのよ」と、
ママが安西くんに焼き菓子を入れたボックスを渡して庭の駐車場に見送りに出てくれる。

パパがタロウのキャリーバッグを持って、
後部座席に置いて、
「なるべく春休みはこっちに戻っておいで?」と私をハグした。


安西くんの車はドイツ車で、丸い形をしていた。

会釈して軽くクラクションを鳴らして、
滑らかに発進した。

何故か小さい一輪挿しがあって、
可愛らしい淡いピンクの薔薇が飾られてた。


「クォーター咲きの薔薇、
珍しいわね?」と言うと、
「これ、瑞樹ちゃんの為に買ってきたんだ」と、
前を向いて運転しながら言った。

「えっ?」

「一番、瑞樹ちゃんぽいヤツを、選んだつもり」と笑う。


暫く車を走らせて、
懐かしい幼稚園に到着した時は、
既に薄暗くなってしまっていた。


「まだまだ、桜は先ね?」と、
車から降りて言うと、

「瑞樹ちゃん、相変わらず小さいな?」と、
私の髪を撫でて言った。

「安西くん、いつも私のこと、
チビって言ってたわよね?」と見上げると、

「違うよ。
小さくて可愛いって言ってたんだよ」と言って、
ふいに身体を抱き締めるので、
驚いて身体が強張ってしまう。


「瑞樹ちゃんのファーストキス、貰ったの、
僕だよね?」と言って、
身体を折るようにしてキスをしようとするので、
私は顔を慌てて背けると、
唇を掠めて頬にキスをされる。


「えっ?」

「ずっと、好きだった。
全然会えなかったけど、
本当に、会いたかったんだよ」と言われて、
困惑してしまう。


「ごめんなさい。
私、好きな人が居て…」

「付き合ってるの?」

頷くと、
「そうだよな。
瑞樹ちゃん、こんなに可愛いんだから、
彼氏くらい、いるに決まってるよな。
ごめん」と言って、
「車に乗ろうか?
寒いし」と言って、
ドアを開けてくれた。


その後は、静かに音楽を聴きながら私のマンションまで車を走らせてくれた。


マンションの前に着くと、
ドアを開けてくれて、
キャリーバッグも持ってくれると、
「今度は実行委員会の4人で会おうね?」と言って、
私の手をそっと握った。
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