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桜が咲く頃逢えたら
第5章 多忙だから放置だなんて大丈夫なの?
「ねえ、前みたいに名前で呼んでよ?」

「えっ?」

「安西くんとか、なんか、淋しい」

「なんて呼んでいたかしら?」

「覚えてないの?
冷たいな」と言うので、

「次回までに思い出しておくね?」と笑った。


「途中で、夕食でもと思ってたのに、
なんか、一気にここまで来ちゃったな。
犬、部屋に置いたら、
近くでご飯食べない?」

「ダメなの。
門限だから」

「えっ?」

「ほら。
もうすぐ8時でしょ?
その時間になるとね、実家から家電話に連絡入るの。
毎日よ?」

「そっか。
じゃあ、今度はもっと早い時間に会いたいな。
あ、実行委員会ってことだよ?」

「うん。
送ってくれてありがとう」と、タロウのキャリーバッグを受け取ると、
安西くんは私をそっとハグして、

「付き合ってるヤツって、大学生?
瑞樹ちゃんと同じ学校?」と訊いた。

私が首を振ると、
「まあ、良いや、
僕、やっぱり瑞樹ちゃんのこと、好きだから。
別にそれは良いよね?
じゃあ、おやすみ」と言うと、
額にキスをして車に飾っていた薔薇を私に渡すと、
そのまま車に乗り込んでしまった。


茫然としながら車が遠去かるの見ていると、
「瑞樹さん、どうしたの?」という紘子さんの声がして、
少しびっくりしてしまった。


「あ…。
今ね、安西くんに送って貰ったの」

「そうなんだ。
久し振りだったでしょ?
部屋で話、聴かせて?」と言うので、
2人でエントランスに入って、
部屋に戻った。



部屋に入ってから、
ひとまず実家に電話をして、
帰宅したことを伝えた。

「あら?
早かったのね。
ご飯でも食べて帰るのかと思ったわ」と言われて、
「今度、紘子さん達とみんなでご飯に行くってことにしたの」と説明した。


まだまだ話をしたそうなママに、
「紘子さんに今日、決まったことを説明したいから、
電話、切っても良い?」と言って、
話を切り上げてしまった。




紘子さんは少し疲れた顔をしていたので、
ミルクティーを淹れて、
持ち帰った焼き菓子を出してダイニングテーブルに座った。
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