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桜が咲く頃逢えたら
第1章 なんで出逢ってしまったんだろう
入り口でオーナーさんに、
「おかえり」と言われる。


紘子さんが大きく手を振って私を呼ぶ。
呂律の回らない口調で、

「あれ?
みーちゃん、お化粧は?」と言う。

…ん?
みーちゃん?
そっか。
本名判らないように、そう呼んでくれてるのかな?


「シャワーして着替えたって言ったでしょ?」と言う。

グラリと揺れて倒れそうになる紘子さんを、
隣には立っている長身でがっしりした男性が慌てて支えて、
「ヒロちゃん、大丈夫?」と言う。

髭があって、年齢は良く判らないけど、
私の中では、オジサンかなと思う。

一緒に居るうちの、多分一番歳上に見える、
痩せ気味で落ち着いた感じのオジサンが、
「みーちゃんでしたっけ?
ヒロちゃんのお友達って聞きました。
初めまして?
ご一緒に一杯いかがですか?」と言う。


丸テーブルを見ると、
灰皿が置いてあるので、
私は少し申し訳ない顔をして、

「ごめんなさい。
私、喘息があって煙草、苦手なんです」と言うと、

「ヒロちゃん、大丈夫?
もう帰る?」と紘子さんに言ってみた。


「やだ。
まだ帰らない。
ジャンボさんともっと呑むの!」と言って、
支えてくれてる長身のオジサンの腕に自分の腕を絡めて、
多分胸とかを押し付けてる。


私は紅くなってしまって、
「じゃあ、カウンターに居るね?」と言って、
ジャンボさんと言う人と、
痩せ気味のオジサンに頭を下げた。


そのテーブルにはもう1人、多分、泥酔しちゃって、
テーブルにすっかり身体を預けるように寝ている長身のオジサンが居たけど、
顔とかは見えなかった。


私は小さく溜息をついて、
カウンターに戻った。
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