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桜が咲く頃逢えたら
第6章 少しのジェラシー
車に乗る前に、
百貨店の一階にある薔薇専門のお花屋さんで、
香りの良い薔薇を一輪買って、
「はい。
今日のプレゼント」と私にくれる。


「えっ?」

「幼稚園の時も、よくお花、
観てたでしょ?」

「嬉しい。
安西くん、ありがとう」

「まだ、安西くんか。
名前で呼んでくれないの?
まあ、良いけどさ」と笑う。


車に乗り込むと、
「食べたいものは?
行きたいトコとか、ある?」と訊かれるけど、
あんまり思いつかなくて、
考え込んでしまう。


「みなとみらいとかの夜景見えるトコで、
なんか食べようか?」と言うと、
車を滑らかに発進させる。

そして、エスニックフードを楽しめるカジュアルなお店で、
リラックスした気持ちで食事をした。


「あいつら、凄かったな?」

「えっ?」

「あっ。そうか。
瑞樹ちゃんからは見えなかったんだね?
映画の時も、結構ハードで参ったよ」と言うので、
私は飲んでいたトロピカルアイスティーを吹き出しそうになって咳き込んでしまった。

慌てて安西くんが背中をトントンしてくれる。


「大丈夫?」と覗き込まれて、
「ありがと」と小さい声で言った。


「今頃、まだ、ラブホに居るのかな?
映画館でも凄かったからな」と言われて、
紅くなってしまう。


「僕も瑞樹ちゃんにキスとか、したかったけど、
もう、それどころじゃない感じだったから、
平常心を保つの、必死だったもん」と笑った。




車に戻って、
「もうちょっと夜景、観ていこうか?」と、
高台に車を回してくれる。

「ここ、綺麗ね?」と言って、
安西くんの方を見ると、
少し真剣な顔をした安西くんが、
私の両頬を手で押さえるようにしてキスをした。


「えっ?」と言うと、
「瑞樹ちゃん、好きだ」と言いながら、
角度を変えて啄むようなキスをして、
私の顔を見る。

そして、目を閉じると、
更に深いキスをしようとするので、
「安西くん、やめて?
私、好きな人が…」
と言って、押し返そうとした。


「ごめん。
高橋たちに当てられたのかな?
送るね?」と言って、
額にそっとキスをすると、
エンジンを掛けた。


その後はずっとお互い無言で、
私は窓の外の暗闇と流れる光をずっと見ていた。
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